ブッダに学ぶ生き方改革! 「45歳定年」がささやかれる現代社会で必要とされる人材になるには:大愚和尚のビジネス説法(2/3 ページ)
2021年9月に開かれた経済同友会のオンラインセミナーにて、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が提言した「45歳定年制」が大きな波紋を呼びました。多くの賛否両論がありましたが、私自身は、新浪社長の提言自体、社会に対する一つの重要な問題提起だったと感じています――大愚和尚に聞く、定年までの“生き方改革”とは?
意識改革、生き方を改革しよう
この厳しい現実を目前にして、働き方改革が叫ばれています。しかし、今私たちにとって本当に必要な改革は、経営者にとっては経営改革であり、一般の人たちにとっては生き方改革です。
「このままではいけない。改革が必要だ」。意識のどこかで多くの人がそう感じているにも関わらず、実際にはなかなか改革が進まない。では、なぜ改革が進まないのか。その原因は「危機感の欠如」にあります。危機感に欠けるから、トップは既得権益にしがみつき、ボトムは他力本願に甘んじ続ける。問題を嘆き続けても、改革を起こさなければ、現状は変わりません。
「トップの責任か、ボトムの自己責任か」ではなく、一人一人の生き方改革が必要なのです。
実は、2600年前のインドに、そのことを指摘した人がいました。ブッダです。ブッダは、かつて北インドに存在した釈迦国の王子として生まれ育ちました。しかし、王位を捨てて、29歳で出家。35歳で悟りを開き、80歳で亡くなるまで各地を歩いて、人々に苦しみを離れて、幸福に生きる道を説いた人です。
ブッダは、時の国王から大富豪、カーストの最下層に位置する人々までに等しく教えを説き、全ての階層の人々に生き方改革を提言したのです。その教えの根底には、三法印(さんぼういん)と呼ばれる3つの真理がありました。
- 1、諸行無常(しょぎょうむじょう):諸行無常とは、「この世に固定的な存在はなく、全ての事象は死滅に向かって変化し続ける」という意味です。命あるものは必ず死ぬ。ブッダは時に、弟子たちに命の有限性を肌で感じさせるために、霊鷲山(りょうじゅせん)と呼ばれた死体捨て場で説法をしたと言われています。
- 2、諸法無我(しょほうむが):「諸行無常であるがゆえに、絶対固定的な、わたし、もまた無い」という意味です。諸行無常の説明を読むと、何だか物悲しい感じがするかもしれません。しかし、ブッダは、弟子に絶望感を与えるために危機感を与えたわけではありません。諸行無常の真理が徹底して分かると、希望が湧いてくるのです。諸行無常自分自身もまた、固定化したものではなく、自在に変化する可能性を持っていることが分かるからです。
- 3、涅槃寂静(ねはんじゃくじょう):「諸行無常」と「諸法無我」を徹底的に腹落ちさせると、人生のあらゆる変化、想定外の変化にも、希望を失わず、心を穏やかに過ごせるようになる。それが涅槃寂静の意味です。
私たちは常に変化し続けています。時代も、政治も、会社も、仕事も、周囲の人間関係も、そして私たち自身も、時々刻々と変化し続けています。
「いい学校に入って、いい会社に入れば、一生安泰」。そんな幻想を抱いている人に、「現実を見据えて、生き方を改革せよ」と説いたのがブッダなのです
会社に必要とされる人財になるには
資本主義社会である、現代の日本には、選択の自由があります。毎日の食事、服、靴、車、遊び場所、旅行先といった日常の小さなことから、進学先、結婚相手、就職先といった人生を左右する大きなことまで、私たちは日々、色々なものを選んで生きています。選ぶ基準は、「好き、嫌い、好きでも嫌いでもない」の三つです。
ここまで読んであなたは「そんなの当たり前でしょう」と思ったかもしれません。そう、当たり前です。私たちは、「好き、嫌い、好きでも嫌いでもない」といういずれかの選択を常にしています。しかし多くの人が、この取捨選択が自分にも当てはめられていることに気付いていません。
厳しいことを言うようですが、あなたが好き嫌いによって、仕事や会社を選ぶように、会社や顧客もまた、あなたを選んでいるのです。幸い、労働基準法などの法律によって多くの人が守られていますが、人間が人間を雇用しているのですから、それが現実であることを忘れてはなりません。
だからといって、自分を押し殺して嫌な上司に媚びへつらえ、と言うわけではありません。自然と会社から求められる人になればいいのです。
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