カシオの“G-SHOCK携帯”、9年ぶりの新機種 復活の狙いと舞台裏をKDDIに聞いた:4年に及ぶ地道な交渉(2/5 ページ)
2000年代、アウトドアファンを中心に根強い人気を誇ったカシオのタフネス携帯「G'zOne」シリーズ。カシオの事業撤退もあり、その歴史に終止符を打っていたが、KDDIは12月、9年ぶりに新機種を発売した。復活の狙いと舞台裏を担当者に聞いた。
カシオこだわりの物理キー
満を持して、9年ぶりに登場した新機種。ガラケー時代からの特徴である流線型でごつごつしたデザインを新機種でも継承した。G-SHOCKを意識し、サブディスプレイを丸形に、端末裏側にも彫刻を施した。
今のスマホ時代では珍しくなった物理キーには、デザインを監修したカシオが、電卓の製造で培ったノウハウとこだわりを詰め込んだ。押し間違いを防ぐため、キーの押しやすさ、キーピッチなども人間工学に基づいて設計。通常、四角で大きくするガラケーのキーボタンを、あえて細くするとともに、キー同士の距離を開けて、ピンポイントで押せるようにした。「手袋を着用した状態でも押し間違いが少ない」(KDDIの近藤マネジャー)という。
新機種では、スマホ時代に合わせて、AndroidOSに対応。従来のスマホのように好きなアプリを追加することはできないものの、ガラケーモデルの旧機種から電池容量が2倍に増加。塩水にも対応し耐久性が向上するとともに、液晶もより高精細なものを搭載した。
9年間で技術が大きく進化したスマホに対し、G'zOneシリーズの新機種では「基本性能や部品構成はさほど、旧機種とほとんど変わっていない」(近藤マネジャー)という意外な答えが返ってきた。
「スマホと異なり、ガラケーはサイズが限られていて、どれだけ小さく作れるかが重要。スマホの登場とともにガラケーは失敗の典型例として批判されたが、ガラケーは当時からよくできていたんだなと感じた」(近藤マネジャー)
なぜ今、ガラケー? 背景に3G停波
米アップルの「iPhone」シリーズなど、スマホ時代の今、なぜあえてガラケーで新機種の発売に踏み切ったのだろうか。近藤マネジャーは「ガラケーモデルへのファンの根強い支持、そして22年3月に迫った3G停波が関係している」と説明する。
カシオ撤退以降、G'zOneシリーズのユーザー動向は大きく二分した。同シリーズのスマホモデルを使用していたユーザーは京セラのTORQUEシリーズにもスムーズに移行した一方、ガラケー機種の愛用者は、乗り換えることなく同じ機種を使用し続けた。バッテリー持ちや耐久性では、スマホよりも二つ折りモデルのガラケーに分があるためだ。運送業のように作業用手袋を着用した状態で使用することが多いユーザーからは、タッチ操作ではなく物理キー操作へのニーズも根強かった。
KDDIが実施したユーザーアンケートでも、ガラケーモデルのアップデートを求める声が多く、中には「スペックやデザインは10年前と全く同じでいいから、再度製造してほしい」「めったに壊れないが、万が一に備えてガラケーモデルの中古を購入し、予備として持っている」といった声もあったという。こうした熱烈なファンの声をバックに、ガラケーモデルをベースにした新機種投入を決めた。
ガラケーモデルを新機種とした背景にはKDDI側の事情もあった。同社は11月、22年3月末で、3G携帯電話向けサービス「CDMA 1X WIN」を終了すると発表。ガラケーモデルのままでは使用できなくなる恐れがある。このため、同社はガラケーモデルのユーザーに新機種に乗り換えてもらい、受け皿にする狙いもあった。
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