カシオの“G-SHOCK携帯”、9年ぶりの新機種 復活の狙いと舞台裏をKDDIに聞いた:4年に及ぶ地道な交渉(4/5 ページ)
2000年代、アウトドアファンを中心に根強い人気を誇ったカシオのタフネス携帯「G'zOne」シリーズ。カシオの事業撤退もあり、その歴史に終止符を打っていたが、KDDIは12月、9年ぶりに新機種を発売した。復活の狙いと舞台裏を担当者に聞いた。
京セラから反発の声 総勢50人に直談判
交渉を始めると、自身の思いとは裏腹に、突きつけられた現実は厳しいものだった。近藤マネジャーの提案に対し、京セラの関係者は「なぜ他社のシリーズを作らないといけないのか」「うちのデザインでは不満ということか」と反発した。同社にはカシオ撤退後に築き上げた、タフネスモデルのTORQUEシリーズへの自負があった。
京セラからの反発は、近藤マネジャーの「想定の範囲内」だったという。近藤マネジャーは、SNSやKDDI独自に集めたユーザーの声を示し、反発する京セラ社員一人一人を地道に説得して回った。
その結果、徐々に理解者が増え「他社に企画を持って行かないでほしい。うちで作らせてほしい」などの声が出てくるように。企画やブランディングを手掛ける部署に比べ、設計部門では、タフネスモデルという新境地を開拓したG'zOneシリーズへのリスペクトがあったのだ。
近藤マネジャーの思いに共感する動きは他部署にも広がり、最終的に京セラが製造受託先に決まった。
KDDI内部の調整やデザイナーの確保に奔走
製品化までにはKDDI社内でも「今更、ガラケーは無謀。成功するわけない」といった慎重論や、「過去の機種にいつまでしがみついているのか」などの厳しい意見もあった。近藤マネジャーは京セラに対して同様、ファンの声を示し、説得を続けた。
製造委託先が決まり、KDDI社内でも製品化の方針が固まる中、いよいよデザインを正式にカシオに正式依頼することになった。カシオとしてデザイン受託の経験がないため「都度法務部のチェックが入り、役員会議でも何度も議題になった」という。
携帯事業撤退後、当時のデザイナーが社内で散り散りになっており、携帯デザインの経験者を探し、再集結するのも一苦労。気が付けば、直談判した人数は50人を超えていた。
社内外の調整で困難に直面する近藤マネジャーを支えたのは、ファンの期待と自身の“カシオ愛”だった。アウトドア向け時計ブランド「PRO TREK」シリーズを愛用していたり、3万円の高級電卓を購入したりするなど、近藤マネジャー自身も大のカシオファン。「心の底では、企画者というより一ファンの目線になっていたかもしれない。それだけ復活させたいという思いが強かった」と振り返る。
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