ソニーも参入 各社からEV出そろう2022年、消費者は本当にEVを選ぶ?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
22年は、これまで以上に「EV」に注目の年となることは間違いありません。なぜなら、22年は市場に販売できるEVがそろう年になるからです。
エンジン車とEVが並んでいたら、どちらを選ぶのかが試される
日本メーカーにも輸入車ブランドにもEVが揃う。これが22年となります。そして、この状況は、日本の消費者が初めてEVという商品をジャッジできるようなったことを意味するのです。これまでは売っていないので、「EVシフト」に関しては、良いも悪いもありませんでした。しかし、22年は違います。ここで日本人がEVを買うのか、それとも見送るのか。
政治家やメディアが、どれほど声高に「これからはEVの時代」と宣言しても、実際にクルマを購入するのは一般の人々です。「EVの時代」になるのかどうかを決めるのは、一般の人々の購買行動でしかあり得ません。数百万円もするクルマを買うときに、エンジン車とEVが並んでいたら、どちらを選ぶのか。それが試されるのが22年になることでしょう。
個人的な予想を述べさせていただければ、22年にEVが“驚くほどたくさん売れる”ことはないと考えます。それは単純に、現状のEVはエンジン車と比べて、まだまだ高額で、さらに充電のわずらわしさも解決されていないからです。
そもそも、近年の「EVシフト」のムーブメントは、ディーゼルゲートの失敗で路線変更を迫られた欧州が新たに生み出したもの。何か画期的な新しい技術が生まれたわけではありません。また、ガソリン供給に問題が発生したわけではありません。
そういう意味で、10年前に誕生した日産「リーフ」と技術的な差異はそれほど大きなものではないのです。そして、過去10年を振り返れば、日産「リーフ」は、期待ほどたくさんは売れませんでした。状況も技術も大きく変わっていないのですから、商品をそろえれば、いきなりEVが売れるようになるとは考えにくいのです。
もちろん、環境や未来の社会を考えれば、エンジン車からEVなどにシフトしていくのは間違いないことでしょう。しかし、大きく動くのは、EVという商品の魅力がエンジン車を上回る必要があります。そのためには技術的なブレイクスルーが必須でしょう。現在、各自動車メーカーが開発している全個体電池のような新しい技術が用意されたときになって、ようやく大きな動きが見られるようになるのではないでしょうか。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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