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世界初! 道路も線路も走る「DMV」が登場して、何が変わろうとしているのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/8 ページ)

2021年12月25日、徳島県と高知県を結ぶ「阿佐海岸鉄道」で、鉄道と道路を直通できるDMV(デュアル・モード・ビークル)の運行が開始された。旅客用としては世界初の実用化で、国内外から多くの乗りもの好きが訪れるだろう。しかし観光地になるためには、まだまだやるべきこともたくさんあると感じた。

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 観光客への訴求が最も重要だ。鉄道ファンより旅行好きのほうが多い。しかし、「DMVはおもしろそうだ」と思っても、DMVだけでは来ないだろう。そこで現地の観光スポットの周知が重要になる。車内放送の自動音声に観光ガイドがなかった。そこは残念だ。


宍喰駅周辺は花畑を拓き、海側とは反対側の車窓を演出。クラウドファンディングで整備された

 海陽町の竹ヶ島には海中観光船ブルーマリン、小さな水族館がある。東洋町はサーフィンで有名だ。シーカヤック、ダイビング、SUP(スタンドアップパドルボード)なども体験できる。

 しかし、これらはDMVの運行区間から離れている。今後はバスモードで立ち寄るコースを設定するか、DMVと連携した二次交通の整備が必要だ。DMV沿線はマリンリゾートとして十分通用する。

 室戸市には小学校をまるごと改造した「廃校水族館」がある。水泳用のプールでウミガメやサメが泳いでいる。ここは土休日の「室戸コース」で立ち寄ると決まった。しかしDMVは1往復だけだから、往復乗車すると立ち寄れない。平行する高知東部交通バスと連携した時刻表や往復きっぷがほしい。

 室戸観光のためだから、高知県や室戸市がDMVをもう1台用意して2往復体制にするとか、平日も運行するとか。なにしろ車両は1台1億2000万円もかかる。維持費は安くても、購入費は鉄道車両と変わらない。これは今後の課題になるだろう。


DMVは土休日に室戸半島へ足を伸ばす。初便の歓迎式典が「海の駅とろむ」で開催された

DMV初便が海の駅とろむに到着。太鼓の演奏と大勢の室戸市民に迎えられた

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