世界初! 道路も線路も走る「DMV」が登場して、何が変わろうとしているのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/8 ページ)
2021年12月25日、徳島県と高知県を結ぶ「阿佐海岸鉄道」で、鉄道と道路を直通できるDMV(デュアル・モード・ビークル)の運行が開始された。旅客用としては世界初の実用化で、国内外から多くの乗りもの好きが訪れるだろう。しかし観光地になるためには、まだまだやるべきこともたくさんあると感じた。
「モードチェンジ」を合い言葉に
お菓子にはほかにもアイデアを出した。駄菓子の飴の「変わり玉」はどうか。私の世代以上には懐かしい。舐めていくと色が変わる。これは実現していないけれど、DMVのモードチェンジになぞらえて「変化」するアイテムがいい。地元の人々からもアイデアが出て「DMVカレー」ができた。2種類のルーが同梱されていて、混ぜると味が変わる。モードチェンジするカレーだ。
筆者は「御守り」も提案した。甲浦駅に隣接して神社がある。あそことコラボして「DMV御守り」を作ってはどうか。この御守りは阿佐海岸鉄道が神社とは関係なく商品化した。御守りの趣旨はもちろん「モードチェンジ」だ。
人生にはモードチェンジがたくさんある。入学、卒業、成人、失恋、結婚、出産、就職、退職、引退、独立、引っ越し、出所、資格取得など。「あなたのモードチェンジが成功しますように」。その御守りである。しかもDMVの3台の色に合わせて3種類ある。DMVの車体色を3色に塗り分けて良かった。菓子でも玩具でも、手頃な値段であれば、3色とも買いたくなるものだ。
DMVそのものを観光のテーマとするだけではなく、DMVのモードチェンジに掛けて「人生のモードチェンジ」を観光地のテーマとしてはどうか。モードチェンジを迎えた人が訪れ、決意を新たにしたり癒やしたり、そんな観光地になってほしい。DMV沿線は「モードチェンジの町」として売り出してみたらおもしろそうだ。テーマがあれば、「宝来堂」のご主人のように知恵を発揮する人がほかにも現れると思う。
人生のモードチェンジには物語がある。無理矢理「フィクション」を作らなくても訪れる人の「ノンフィクション」を受け入れ、応援する町へ。阿佐海岸鉄道をきっかけに、まずは沿線地域からモードチェンジしてほしい。観光地を盛り上げる役はもてなす人々、知恵と手間。DMVはきっかけにすぎない。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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