「遺体ホテル」に「マンション坊主」 2040年の多死社会は、葬儀ビジネスをどう変える?:1日に4600人が亡くなる(2/3 ページ)
日本は2040年に多死社会を迎える。1日に約4600人、年間に約168万人が亡くなる計算だ。そんな状況下で「葬儀ビジネス」はどう変わっていくのか? また、多死社会が終わり、縮小し始める市場で、事業者たちはどうするべきなのだろうか?
なぜ火葬場は増やせないのか?
火葬場が少ない地域だと火葬に10日ほど待つこともあるという。「火葬場の新設」は多死社会の到来に向けた1つの解決策になり得そうだ。しかし、横田氏は難色を示す。特に民間事業者の参入は難しいという。
「理由は大きく2つあります。1つ目は火葬費用です。横浜市の公共の火葬場を利用する場合、料金は1万2000円ですが、民間は5万円前後かかります。市の財政でまかなっているため価格が抑えられているのです。これから参入するとしたら、火葬費用を10万円ほどに設定しないとコストが回収できないと思います。民間が公共と張り合っても勝てないのです。
もう一つは、2040年で稼働がピークを迎えるということです。火葬場の建設には7〜8年ほどかかります。また、団塊世代、団塊ジュニア世代の方々が亡くなると、逆に火葬場が余ってしまいます。コスト回収のリスクを考えると10年の需要は短いと思われます」(横田氏)
40年に死者数がピークを迎えるということは、それ以降死者数が減っていくことを意味する。現在は右肩上がりだが、15年後に確実に縮小する市場なのだ。長年、葬儀ビジネスに携わってきたニチリョクはこの状況をどう考えているのだろうか?
頭打ちになる「葬儀ビジネス」 未来予想図は?
「長期的な話のため個人的な意見となりますが、まず40年には病院が足りなくなり、新しい葬儀のかたちが広がると思います。亡くなる前には入院しますが、病院数を急激に増やすことは難しいため、入院できずに自宅で亡くなる方が増えます。現在は、亡くなる方のほとんどが病院ですが、将来的に自宅が2〜3割ほど増えると思います。
自宅で看取られた場合、そのまま火葬日まで安置すればいいのでわざわざ遺体ホテルを利用する必要がありません。現在はインターネットでひつぎや骨壺なども購入できます。火葬場の予約と霊柩車の手配のみを葬儀屋に依頼する”セルフ葬儀”が広がっていくのではないかと思います」(横田氏)
「マンション坊主」と呼ばれるお寺を持たずに活動するフリーランスの僧侶も存在するという。僧侶派遣サービス「お坊さん便」としてアマゾンに出品されていたこともあったようだ(現在は出品を停止)。
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