牛のゲップを抑えて温暖化対策も GXに取り組むスゴイ会社(1/4 ページ)
DXに続き、昨今のトレンドの1つがグリーントランスフォーメーション(GX)だ。テクノロジーを駆使して脱炭素など、温室効果ガスを抑制し、持続的な社会を築く取り組みを指す。そんなGXに長けた世界の企業をいくつか紹介しよう。
DXに続き、昨今のトレンドの1つがグリーントランスフォーメーション(GX)だ。テクノロジーを駆使して脱炭素など、温室効果ガスを抑制し、持続的な社会を築く取り組みを指す。
そんなGXに長けた世界の企業をいくつか紹介しよう。教えてくれたのは、三井住友DSアセットマネジメントで全世界のGX関連企業に投資する「グローバルGX関連株式ファンド」を運営する、運用部グローバルグループヘッドの青木英之氏だ。
牛のゲップのメタンガスを抑制
地球温暖化対策というと二酸化炭素排出量を抑えることを指すことが多く、脱炭素などとも呼ばれる。しかし、温室効果ガスは二酸化炭素だけではない。有名なのが、牛のゲップに含まれるメタンガスだ。
メタンガスは二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持っており、その2〜3割は“はんすう”する動物のゲップによるものだとされている。牛やヒツジ、ヤギは世界に30億頭あまり飼育されており、世界全体の温室効果ガスのなんと4%がゲップで生まれている。
この牛のゲップを減らせる飼料を開発しているのが、オランダのロイヤルDSMだ。「牛が草を消化するときにメタンガスが発生する。この消化のプロセスに影響して、メタンガスが発生しないようにする」と青木氏。3〜4割のメタンガスが削減できるという。これは、石炭火力発電所126カ所に相当する量だ。
このDSM、もともとは100年以上の歴史を持つ炭鉱会社だった。石油がエネルギーの中心になるタイミングで、総合石油会社に変わり、今また再びエンジニアリングプラスチックとビタミン飼料配合剤に経営の軸足を移している。時勢に合わせて、本業を大きく転換した形だ。
同社が開発したメタン抑制剤Bovaerは、すでにEUで承認を受けており、米FDAでも承認プロセスが進んでいる。「これから販売を開始し、2030年には5億ユーロ程度の売り上げとなる見込み。ただこれは乳牛だけの数字だ。3倍以上の数がいる肉牛をターゲットにできれば市場は大きく広がる」(青木氏)
しかし牛にこの飼料を食べさせるコストは誰が負担するのだろうか? 「温室効果ガスを出さないで育った牛です」と書いてあったら、消費者は高くても買うのだろうか。実はここに規制の妙味がある。ヨーグルトなどの乳製品を作っているメーカーは、温室効果ガスに関する影響を開示する必要に迫られているのだ。
例えばEUは、資産運用会社に対し投資先のサステナビリティ情報開示を求める規制を進めている。これによって、投資をしてほしかったら温室効果ガスについての開示が必要で、そうなるとコストを掛けてでも排出量を減らさなくてはならないというインセンティブが働くわけだ。
関連記事
- 我が社は気候変動なんて関係ない? 環境配慮が経営リスクど真ん中である理由
昨今、地球温暖化対策に向けて脱カーボンなどの動きが激しくなっている。とはいえ、自動車産業や工場などとは違い、特にCO2を出すような事業をやっているわけでなければ、「我が社には直接は関係ない」と、心のどこかで思っている経営者もいるかもしれない。 - ポルトガル2.5国分の電力を消費するビットコイン 仮想通貨の脱炭素化はなるか?
ビットコインが大量の電力を消費することはよく知られている。その量は1260億kWh以上。実にポルトガル2.5国分以上、アルゼンチン1国分に相当する電力だ。一方で、世界は今、脱炭素化、カーボンニュートラルに向けて急速に動いている。 - ESGは本当に企業価値を上げる? ESG投資の注目は「資本コスト」
昨今よく耳にする「ESG投資」。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字からなり、これらへの取り組みを考慮して投資を行うという手法だ。しかしESGへの取り組みは、なぜ企業価値を上げるのだろうか? ポイントの一つは企業価値の算出に大きく影響する資本コストにある。 - 投資は、お金もうけか社会貢献か? ESG投資の可能性
株式投資といえばお金を増やすためにすること――。そんな考え方が、徐々に変わってきているかもしれない。社会に貢献している企業の株式を買うことで、応援し、世の中をよくしていく一歩にしたい。そんな目的の投資スタイルが生まれていく可能性がある。 - 仮想通貨を大暴落に導いた“ESG”とは何者なのか
あのイーロン・マスク氏も太鼓判を押していたビットコインが、今大暴落している。この暴落相場の背景には、中国による規制や、納税のための換金売りのタイミングが重なった点ももちろんあるが、やはり最大の要因はESG懸念に基づくマスク氏の「心変わり」にあると見られている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.