【決算】黒字化果たしたマネフォ、再び投資加速で30〜40%の成長をコミット(2/2 ページ)
マネーフォワードが再度、成長に向けた投資に踏み切る。いったんEBITDAで黒字化したが、今後広告宣伝費などに大きく投資し赤字となる計画。年率30〜40%の売上高成長をコミットした。特に、ストック型収入であるSaaSのARR(年間定期収益)にフォーカスし、早期に200億円規模を目指す。
バックオフィスSaaSの高成長は続くか?
その成長は、法人向けSaaSにかかっている。マネーフォワードが注力するSaaS ARRは、その6割以上をバックオフィス向けSaaSを中心とした法人向けサービスが担っているからだ。そして最も高成長なのも法人向けSaaSだ。全体のARR成長が40%以上を目指す中で、法人向けサービスは最低47%以上を見込む。
個別の成長施策でいえば、法人向けSaaSの伸び余地はいろいろとある。給与支払い、勤怠、人事管理など人事労務向けプロダクトの併用率は、20年11月期の34%から21年11月期には53%へと1.5倍に上昇している。1つのプロダクトを導入した企業が、続いて他のプロダクトを導入することで単価(ARPA)が向上しており、中堅企業においては30〜40%の単価上昇を見込む。
21年にはERPプロダクトとして、債権請求、債務支払、固定資産管理、オンライン契約などのプロダクトを立て続けに投入しており、クロスセルによるARPA増は各所で期待できる。
ARPAと並ぶ重要KPIである顧客数は、広告宣伝費の積み増しで加速させる。顧客獲得にかかった費用(CAC)は、24-36カ月で回収する見通しの下に投資する。直近では法人顧客数は1年で約28%増加しており、ARPAとのかけ算でARR47%成長を見込む形だ。
ただし、現時点では中期の成長戦略としてドラスティックな何かが示されたわけではない。21年夏に公募増資で300億円を資金調達したが、大型の新規プロダクトや大型買収を見込んでというわけではなく、広告費や人材採用がメインだ。つまり、これまでの戦略を継続しつつ、広告宣伝費の積み増しで加速させる手法になる。堅実といえば堅実で、EBITDA赤字化の投資といっても、ギャンブル的な何かに資金を使うという話ではない。
法人向けサービスの伸び代
今後の法人向けサービスの伸び代として、注目点は3つほどある。
1つは、三菱UFJ銀行との合弁会社Biz Forwardが手掛ける、請求決済代行とファクタリング事業だ。21年8月に設立したばかりの会社で、今期の計画にはほぼ売り上げが盛り込まれていない。
2つ目はクラウド債務支払の展開だ。これは、メールや紙で届いた請求書を、OCRで自動的に取り込んでデータ化し、電子承認を経たあと、支払いの振り込みも銀行APIを用いて実行してしまうもの。23年にはインボイス制度の開始が控えており、紙で処理していた請求書を電子化しようという流れは加速する。法制度的に追い風が吹いている分野だ。
3つ目は、法人向けプリペイドカードを皮切りとしてスタートしたB2B決済の領域だ。日本では法人決済は銀行振込が主流だが、APIが徐々に整備されてきてはいるにしても、銀行のインターネットバンキングは使いづらく、付加される情報も乏しい。ビジネスの根幹でありながら、長らく大きなアップデートがされてこなかった分野であり、変化が始まったときのインパクトは大きいだろう。
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