2022年4月から適用「グループ通算制度」とは? 4つのメリット:実務を解説(2/2 ページ)
4月から、グループ内で損益通算等を可能とする「グループ通算制度」が適用され、作業の煩雑さが指摘されていたこれまでの「連結納税制度」は廃止されます。新たな制度のあらましと実務をおさらいします。
(1)所得と欠損の通算による節税
グループ内に課税所得が発生した企業(黒字企業)と欠損金が発生した企業(赤字企業)とがある場合、黒字と赤字を通算して法人税負担額を減少させることができます。例えば、図表1の連結子法人Bが保有する欠損金3000は、連結親法人A、連結子法人Cで発生した課税所得と通算することができます。
(2)繰越欠損金の有効活用
グループ通算制度の開始前に生じた繰越欠損金は、一定の要件を満たせばグループ通算制度へ持ち込むことが可能です。
持ち込んだ欠損金は、グループ全体の所得金額から一定の限度額以内で控除することが可能で、単体納税制度に比べ早期の欠損金解消を見込めます。
(3)各種税制のグループ全体活用
試験研究費の税額控除や外国税額控除といった税メリットのある各種税制は、グループ全体で控除額を計算することが可能になり、法人税負担額が減少することも十分想定されます。
(4)特定同族会社の留保金課税減少
所得と欠損の通算により所得が小さくなるため、留保金課税の基礎となる留保所得金額も減少します。そのため特定同族会社における留保金課税制度の適用を受けている場合、法人税負担の減少が見込めます。
以上が4つの主なメリットです。細かい論点は多岐にわたりますので、まずは大きくメリットがあるかどうかを検討しましょう。導入するメリットがありそうであれば、自社の状況に応じて細かく論点の可否を確認していくことになります。
制度適用のスケジュール
連結納税制度を導入済みの企業と、未導入の企業で適用スケジュールが分かれます(図表2)。どちらの企業もポイントは「いったんグループ通算制度を適用すると、簡単には戻れない」ことにあります。
そのため、グループ通算制度の適用開始に当たっては慎重な検討が必要です。直近年度の法人税申告書数値を用いたシミュレーション、自社グループにとってメリットのある各種税制のグループ通算制度移行下における影響度調査、制度導入に伴う社内規定の整備、移行コストの確認等の検討を経て、グループ通算制度を開始するかどうかを決定します。
(1)連結納税制度を「導入済み」の企業
連結納税からの制度移行日(2022年4月1日〜)からグループ通算制度へ自動移行となりますが、届出を提出することで単体納税に戻ることも可能です。
連結納税制度も容易には単体納税に戻れない制度でしたので、連結納税制度の適用を開始したものの、現状メリットがあまりないことから取りやめたいと考えていた企業にとっては、千載一遇の機会であると言えます。
所轄税務署長に届出を提出する必要があるため、単体納税制度に戻る場合は届出を忘れないようにしましょう。
(2)連結納税制度「未導入」の企業
グループ通算制度の導入を決定した場合、適用を受ける最初の事業年度開始の日の3カ月前までに、親法人および子法人全ての連名で承認申請書を提出する必要があります。
3月決算の会社を想定すると、制度の適用が始まる2022年4月〜2023年3月決算期でグループ通算制度の適用を受けたい場合、2021年12月末までの申請書提出が必要です。そのため、これから検討を開始する場合、初年度の適用は難しいです。これから検討を始める場合は、最短で次回2023年4月から開始する事業年度での適用を目指すことになります。
税理士等の専門家への相談等を含め、検討に要する期間を考慮したうえで、自社の決算期に合わせて余裕をもって進めましょう。
著者紹介:清水 寛司(しみず・ひろかず)
株式会社アカウンセル/公認会計士・税理士
税務顧問とM&A会計税務サービスを中心に事業展開。経理財務や営業向け研修、専門誌への寄稿等も多く、難解な会計税務を分かりやすく伝えることに定評がある。
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