日立、富士通、NTT……名門企業がこぞって乗り出す「ジョブ型」、成功と失敗の分かれ目は?:働き方の「今」を知る(1/3 ページ)
何かと話題になることの多い「ジョブ型」を前後編で解説。後編記事となる今回では、そもそもなぜ、名門企業がここにきてジョブ型への対応に急ぐのか、そして定着・成功のカギは何なのかを解説していく。
1月10日、日立製作所が「ジョブ型雇用」の適用を全社員に広げる旨の報道がなされた。世間では「年功色の強い従来制度を脱し、変化への適応力を高めるべきだ」とジョブ型を積極推進する声や、一方で「雇用の安定性は担保できるのか」のような不安視など、さまざまな意見が出されている。
「年齢や社歴などに関わらず、職務に最適な人を配置でき、適所適材が進む」
「需要が大きく高度な職務ほど賃金も高くなり、労働力の流動化が加速する」
「社員が自律的にスキルアップに励み、生産性向上も期待できる」
ジョブ型雇用に関しては、このような前向きで明るい未来像が語られることが多いが、実態はどうなのか。そもそもそんな簡単に、日本社会に根付くものなのか。前編記事では、ジョブ型雇用にまつわるよくある誤解を解いた。後編となる本記事では、ジョブ型のメリットや乗り越えるべき課題と解決策について解説していく。
【参考:前編記事】すぐにクビ? 休暇が充実? 日立も本格導入の「ジョブ型」 よくある誤解を「採用」「異動」「解雇」で整理する
そもそもなぜ、各社はジョブ型に乗り出すのか
各社がジョブ型へと舵を切る建前はさまざまけん伝されているが、真の目的は「年功型賃金制度の変革」と「グローバルでの制度統一」にあると筆者は考えている。
「勤続年数に応じてポストと報酬を与え、かつ解雇はしない」という極めて日本的な年功序列と終身雇用の両立のためには、企業の業績も規模も永久に成長し続けなければならない。しかし、バブル崩壊とその後の失われた30年によって、そのような芸当は現実的に不可能だし、現状維持をするだけでも国内だけなくグローバルな事業展開が必須であると多くの企業が認識し始めた。グローバル化の進展に伴い、海外拠点と協業する機会も日常的になる中で、同じチームにジョブ型とメンバーシップ型のメンバーが混じっていると管理や処遇も面倒なことになる。それを統一することにも意義があるといえる。
例えば、とある大手製薬メーカーでは、同じプロジェクト内にM&Aした海外拠点と日本本社のメンバーが混在して仕事を進めている。海外メンバーはジョブ型のため、職務記述書(ジョブディスクリプション、JD)に記載された仕事しかやらない。しかしそれ以外にも付帯的な業務はさまざま存在し、円滑にプロジェクトを進めるためにはメンバーシップ型の日本拠点社員がカバーせざるを得ず、彼らに仕事のシワ寄せが来ることに対して不公平感が出ているのだという。もはや先述したようにグローバル化の進展は不可逆であるため、世界的に見てマイナーである、わが国のメンバーシップ型の方を変更する必要に迫られているというわけだ。
とはいえジョブ型といえども万能ではなく、デメリットも存在する。
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