ジョブ型雇用のために、人事部門に求められる自己改革:いまさら聞けないジョブ型雇用(1/7 ページ)
ジョブ型雇用を日本企業で確実に根付かせていくためには、まず人事部門が変わらなければいけないことを説明します。
人事戦略を再考する
今回が連載の最終回になります。最終回では、ジョブ型雇用を日本企業で確実に根付かせていくためには、まず人事部門が変わらなければいけないことを説明します。
ジョブ型の議論からは少し離れますが、数年前から「人事戦略」や「戦略的人事」といったキーワードをよく耳にするようになりました。筆者の記憶では、少なくとも2000年代の初頭では、人事戦略はまだまだ一般的な用語にはなっていませんでした。日本企業でこれらの用語が一般化してきたのは、この4〜5年といった印象です。
経営の世界では、「戦略」と名の付く用語や概念が流行し始めたら、それは何かしらの危機感の表れであるといえます。無計画に、場当たり的に考えてきてしまったという反省と危機意識が、戦略的であることを求めるのです。
人事戦略に関しても同じことがいえます。とりわけ日本企業の経営者が、より計画的に人事を行う必要があると痛感しているのです。
経営戦略と人事戦略とは、目的と手段の関係
ここで、人事戦略が一体何を意味しているのかを少し考えてみます。そもそも戦略とは軍事用語で、ある目的を達成するために、長期的な視点に立って効果的に資源を運用することを指します。この概念を企業経営の世界に応用したのが経営戦略です。
経営戦略は、企業が持続的に成長するために、事業や地域に優先順位を決めて、経営資源を配分するための指針です。シンプルにいえば、長い目線で見て、どの事業や地域に優先的にヒト・モノ・カネを投資していくのかを計画することです。厳密にいえば、経営戦略は全社戦略と事業戦略とに細分化されますが、今回のテーマは経営戦略論ではないので、いったんはこのレベルで止めます。
こうした経営戦略と人事戦略とは、目的と手段の関係になります。経営戦略を実現するために、人事戦略を策定するのです。具体的に定義付けると、人事戦略は「経営戦略の実現に向けて必要な組織と人材を充足するための大綱」となります。
例えば、ここ数年、日本の製造業では「モノからコトへ」、つまり事業のサービス化(ソリューション化ともいいます)が大きな経営テーマとなっています。従来の製品市場が成熟化し、またコスト競争力も失ってしまったため、製品そのものではなく、高付加価値なサービスを提供することで生き抜いていこうとする戦略です。こうしたサービス化を狙う企業では、従来のモノをつくって売る事業から、サービス事業へ経営資源を再配分していかなければなりません。
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