ジョブ型雇用のために、人事部門に求められる自己改革:いまさら聞けないジョブ型雇用(2/7 ページ)
ジョブ型雇用を日本企業で確実に根付かせていくためには、まず人事部門が変わらなければいけないことを説明します。
人事戦略は、このサービス化を実現するために策定されます。旧来的なものづくりに適していた“プロダクト・アウト型”の組織から、顧客ニーズに立脚する“マーケット・イン型”の組織に変革し、新たなサービスの設計と提供に必要な人材を充足させる──これが人事戦略の基本方針になります。
一般に、製造業の組織は機能効率を高めることをねらいとして、機能別組織となっています。これを顧客やサービスの軸で仕切り直し、新たな組織を構想しなければなりません。組織設計は、単に組織図を書けば終わりというものではなく、一つ一つのポストの役割を定めて、各ポストに求められる人材の姿を描かなければ実効性が確保できません。
当然のことながら、経営戦略を実現しようと思ったら、それに必要な人材を確保する必要もあります。新しい組織体制で求められる人材を、再配置・教育・採用といったあらゆる手段を講じて、質と量の両側面から充足させるのです。
通常、日本の製造業が新たなサービスを提供しようとすると、デジタル技術の活用を避けて通ることはできません。日本企業で、DX(デジタルトランスフォーメーション)がこれだけ騒がれている理由の一端は、ここにあります。日本には、最先端のデジタル技術を駆使してビジネスを再活性化できる人材が少ないといわれています。こうした希少価値が高いデジタル人材をいかに確保していくかが、人事戦略の中で一つの大きな論点になります。
ここでは、日本の製造業における人事戦略を一例として取り上げました。これでお分かりいただけたと思うのですが、見方を変えれば、経営戦略に沿って組織を考え直し、適所適材を実現するのが人事戦略だということです。
かつての日本企業には、そこまで大胆に新たな経営戦略を考える必要性はありませんでした。そのため、人事戦略といった概念自体もあまり求められてきませんでした。ところが、急速なグローバル化や、新興企業の台頭などさまざまな要因によって、昨今の日本企業は軒並み苦戦を強いられています。もはや、従来の延長線上では成長が望めず、これまでとは異なる経営戦略を立てて実行せざるを得ない状況に置かれています。そこに、人事戦略が脚光を浴びている原因があるのです。
VUCA時代の人事戦略と人事部門
ジョブ型雇用をテーマとする本稿で、どうして人事戦略について論じたのかというと、ジョブ型雇用は人事戦略を実行する上で、大事な土台となるものだからです。
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