「東急ハンズ」はなぜ追い詰められたのか コロナ前からの“伏線”と、渋谷文化の衰退:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
東急ハンズ売却のニュースは大いに話題になった。追い詰められた背景には何があるのか。コロナ前からの“伏線”に迫る。
急成長するカインズ
一方のカインズは、1978年に出店した栃木県栃木市のいせやホームセンター1号店が出発点。いせやはベイシアグループの前身。89年に、いせやより分社してカインズが設立された。
カインズは自社開発のPB(プライベート・ブランド)商品に力を入れており、売り上げの3〜4割を占める。ホームセンター業界では際立って多い。また、グッドデザイン賞を受賞するPB商品が多く、デザイン性に優れている。しかも、EDLP(エブリデーロープライス)を標榜(ひょうぼう)して、安くておしゃれな商品が並ぶ。セリアや3コインズの上位変換の店のような見え方で、顧客に支持されている。
業績はずっと右肩上がりで、1991年の720億円が、2000年に1800億円、10年に3365億円、21年は4854億円となっている。20年にDCMホールディングスを抜いて、ホームセンター業界において売り上げ首位に立った。店舗数は225店(21年2月末現在)。
東急ハンズの背中をずっと追いかけてきたカインズが、1990年代までには東急ハンズの売り上げを抜いていた。そして、DIYの主軸は郊外に移っていた。それでも東急ハンズは数少ない都市型ホームセンターとして差別化され、100円ショップ、ドン・キホーテなどパワフルな業態に浸食されながらも、健闘してきたといえる。
ただし、東急ハンズの小型店であるハンズビーや、ショッピングセンターに入居した中型店は、DIY色が薄く、化粧品、文房具、ギフト用品など、100円ショップやドラッグストアと競合していた。商品のセンスが良くても、「手の復権」はあまり感じず、セレクトショップ的でロングテールでもなかった。それが不振のもう1つの要因だ。
化粧品の強化は、インバウンドも意識していたが、コロナ禍で海外から観光客は来ない。外出しなくて家に居るから、化粧をする必要がなく、日本人にも商品が売れない事態に陥った。親会社の東急不動産HDが、東急ハンズの処遇を巡って青ざめるのも無理はない。赤字の拡大を抑えようと、21年10月の池袋店閉店などを断行したが、光は見えなかった。
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