本当に“定額働かせ放題”か? 裁量労働制の仕組み・運用の実態に迫る:新連載・裁量労働制の現在地(2/2 ページ)
厚生労働省では、裁量労働制を含む労働時間制度に関する検討会が2021年から行われています。裁量労働制とはどのようなものか、運用の実態はどうなっているのか、導入の是非はどう判断したらいいのか、などについて連載形式で解説します。
このような疑問に対しては、19年に厚生労働省が実施した裁量労働制実態調査が参考となります。これは裁量労働の適用事業所と非適用事業所(有効回答数はそれぞれ6489件・7746件)、適用労働者と非適用労働者(有効回答数はそれぞれ4万7390件・4万714件)に対し、運用の実態や適用の有無による労働時間の差異などを調査したものです。
余談ですが、読者の皆さんの中には、過去の裁量労働制に関する調査について、データの取り扱いが国会で問題視されたことを記憶されている方もいらっしゃるかもしれません。本調査はその反省を踏まえ、新たに実施されたものとなります。
まず労働時間の実態をみると、裁量労働制の適用労働者は非適用労働者よりも時間数が確かに長くなってはいましたが、その差はあまり大きなものではありませんでした。1週間の平均実労働時間数でいえば、適用労働者は45時間18分と、非適用労働者の43時間02分を上回っています。とはいえ、その差は2時間16分にすぎず、週5勤務として1日に換算すると30分にも満たない時間です。
加えて、裁量労働制の適用に対する満足度そのものが非常に高くなっていました。裁量労働制適用労働者を対象に、適用に「満足している」「やや満足している」という回答の割合を合計すると、専門業務型では80%、企画業務型では83.7%となっていました。
もちろん各社各様の運用があるでしょうし、実態として定額働かせ放題となっている企業もゼロではないでしょう。とはいえ調査の結果から、おおむね労働者の満足に資するように、本人の意向等を十分に踏まえた運用をしているケースが多いようです。
このことから、裁量労働制は現状厳しい制約こそあれど、適用できる・向いている企業にとっては働きやすい環境づくりに向けた、一つの在り方だということができます。次回からは、どのような企業・職種が裁量労働に適しているのかを解説していきます。
関連記事
- 「一度昇格したら降格しない」人事制度が限界です。ジョブ型雇用に変更すべきでしょうか?
社員の高齢化に伴い、「一度昇格したら降格しない」人事制度が限界を迎えている──このような場合、どうしたらいいのだろうか。人事コンサルタントが解説する。 - 「本人は優秀だが部下が辞めてしまう」プレイングマネジャーが増加、人事はどうしたらいい?
プレイングマネジャーのマネジメント力がバラバラで、部下が多く辞めてしまうような部署もある──こんなとき、人事はどうしたらいいのだろうか? 人事コンサルタントが解説する。 - 定年再雇用「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」はOKですか?
定年再雇用を新設する際、「60歳以降、1年ごとに1割給与を減らす」制度は問題ないか。実例を踏まえ、人事コンサルタントが解説する。 - 「社員が低い目標ばかり立ててきます」 目標管理のコツ、どうすればいいでしょうか?
昨年から目標管理を導入しましたが、社員が達成率を上げようとして、低い目標ばかり立ててきます。どのようにすればいいでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.