「うまい棒」はなぜ42年間も「10円」をキープできたのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
「うまい棒」が10円から12円に値上げをする。42年間も値上げをしてこなかったので、「よくがんばった」「すごい」といった声が出ているが、そうした言葉で片づけてよいのだろうか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
「うまい棒」のコストを低く
「うまい棒」の袋を見れば分かるように、このロングセラー商品には「販売元」と「製造元」が別々にある。商品の企画、販売、さらにはマーケティングや宣伝を行っているのが、東京・墨田区にある菓子、食料品の企画販売会社「やおきん」。そして製造を担っているのが、茨城県常総市の製菓会社「リスカ」。「うまい棒」はこの2社が二人三脚でここまで大きく成長をさせた。
今回の値上げでもコメントを出しているのは「やおきん」だし、同社が「うまい棒」のプロモーションや企業コラボを仕掛けて販路を拡大してきたので、「うまい棒=やおきん」というイメージが世の中的に定着しているが、実はこの「42年間価格据え置き」という偉業に関しては、「やおきん」だけではなく、製造元である「リスカ」もかなり貢献している。
「うまい棒」がヒットして生産本数が増えていくのと並行する形で、他の菓子やパンなど製品数を順調に増やして、新しい工場も操業させてきた。つまり、企業規模を拡大することで、大量生産体制を整えて、「うまい棒」のコストを低く抑えてきたのだ。
それを分かっていただくため、リスカの歩みを簡単に振り返ろう。
同社のWebサイトによれば、現・代表取締役会長の武藤則夫氏が、個人でスナック菓子の製造を開始したのは1971年である。「創業時に事業が軌道に乗らず、廃業の瀬戸際にあった」というが、現在も主力商品の1つとなっている、ガーリック味のポテトチップス「ハートチップル」を開発したことでなんとか乗り切ることができた。
そして79年、茨城県大子町に工場を設置して、「うまい棒」やゼリーの製造をスタート。その2年後にようやく、資本金1500万円で法人組織となる。つまり、「うまい棒」の製造を始めたときは、まだ個人事業主に過ぎなかったということなのだ。
そんな小規模事業者が「うまい棒」事業の拡大とともに、着々と企業規模を大きくしていく。定番の「めんたい味」が誕生するなどして、子どもたちの人気が高くなってきた84年には石下工場を新設、さらに大ヒットの「コンポタージュ味」「なっとう味」が誕生した92年には本社工場もできた。その翌年には、チョコレート・ゼリーを専門で扱う水戸工場が完成。さらに95年には、セブン-イレブン向けのパンを製造するグループ会社リバティフーズを立ち上げて、こちらの工場も続々と設置した。
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