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「うまい棒」はなぜ42年間も「10円」をキープできたのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

「うまい棒」が10円から12円に値上げをする。42年間も値上げをしてこなかったので、「よくがんばった」「すごい」といった声が出ているが、そうした言葉で片づけてよいのだろうか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。

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「規模」を抑えた

 なぜ大ヒット商品「うまい棒」の製造にとどまらず、次々と事業を拡大して生産拠点も増やしていくのか。それは当時、武藤氏が受けたインタビューでの発言をみればよく分かる。

 『「しっかりとした枝葉ができたおかげで、幹が太くなった」。武藤社長は品ぞろえを強化したことが、ここまで会社を成長させたと振り返る』(日本経済新聞 2001年2月15日)

 『うちはすき間産業。大手メーカーの商品が並ぶ店頭のすき間に、生産効率が悪くて大手が作れない良品を置いてもらい、全国に拡大して販売量を確保する』(読売新聞 茨城版 2002年11月8日)

 一般的に中小メーカーが大手と対抗するには、「技術力」とか「独創性」という話になりがちだ。しかし、武藤氏はそこに加えて「規模拡大」も重視した。市場を絞り込んで、そこでの品ぞろえを増やし、販売量も確保することに勝機を見出したのだ。

 それが正しかったことは当時の、茨城県の高額納税者ランキングが示している。2004年度にはこう報じられている。

 『1位となった武藤則夫さん(64)(石下町)は、全国でも26位に入った。うまい棒やハートチップルなどで知られる菓子製造会社「リスカ」の社長を務めており、妻の武藤米子副社長(62)も7位に顔を出した』(読売新聞 茨城版 2005年5月17日)

 もちろん、この後もリスカは成長を続けている。前出の日本経済新聞に掲載された「会社概要」によれば、01年1月期の売上高は約80億円、従業員250人。21年現在、売上高は「非公開」だが、「リクナビ2022」によれば従業員は400人まで増加。さらにグループ会社のリバティフーズの従業員も600人となっている。ちなみにこの企業規模は、国の「中小企業者」(製造業)の定義にはもはや含まれない。

 1971年、武藤氏が個人ではじめた菓子製造の零細企業は、今や地元では知らぬ者がいないほど有名企業にまで成長し、災害支援や地域活性化にも積極的に協力している。また、同社のWebサイトに「日本のみならず海外のお客様からのニーズも高まり、アメリカ、韓国、UAE、フランス等国際的な販売網拡大にも至っています」とあるように近年は海外にも進出している。

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