「うまい棒」はなぜ42年間も「10円」をキープできたのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「うまい棒」が10円から12円に値上げをする。42年間も値上げをしてこなかったので、「よくがんばった」「すごい」といった声が出ているが、そうした言葉で片づけてよいのだろうか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
シンプルに経済の話
さて、このようなリスカの「規模拡大の歴史」を振り返れば、「うまい棒」が42年間も「10円」を死守してきたことを「企業努力」というザックリとした話で片付けることに違和感がある、という筆者の主張がご理解いただけたのではないか。
「お客様は神様です」みたいな顧客至上主義が強い日本人は「企業努力」が大好きで、安くて良いものを提供する企業に対してとにかく「痛みに耐えてよくがんばった、感動した!」みたいなスポ根的コスト削減ストーリーにしたがる。要は、顧客のために私利私欲を捨て、無駄を省いてストイックに合理化を目指すことで、価格は低く抑えられるという「神話」にすがってしまうのだ。
だから、中小企業経営者は「顧客のため」「社会のため」という大義名分を掲げて、自分のところで働く従業員をストイックにコキ使う。低賃金重労働を強いているのに、「これは労働者イジメではなく、お客様のための企業努力だ」と自分を正当化しているのだ。
しかし、42年間も「10円」を死守してきた「うまい棒」を見れば、そういう方面の「企業努力」が全くの幻想だということがよく分かる。
「努力」や「がんばり」でもコストを抑えることはできるが、それではすぐに「限界」がくる。作業や調達の合理化、人件費削減などはたかがしれている。しかも、原料高でさまざまなものが値上げしていくなかで、自社の従業員の賃金だけ低く抑えるなど最悪のやり方だ。では、どうすればいいのかというと、リスカのように会社の規模を大きくしていくしかない。
「規模の経済」ではじめてコストを低く抑えることが可能となる。だから、「うまい棒」は原料高騰や増税があっても、どうにか「10円」を維持することができた。これはシンプルに経済の話である。
そのように企業側の綿密な戦略と、スケールメリットがもたらした結果を、「企業努力」の一言で片付けてしまうのは、リスカにも、やおきんにも、「うまい棒」にも、非常に失礼な気がしてしまう。
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