患者は“神様”なのか カスハラから医療を守るために:断る勇気(2/3 ページ)
埼玉県で発生した訪問診療医師射殺事件。コロナ禍でも在宅医療に取り組む貴重な医療人を、一方的で独善的なクレームを寄せるカスハラ(カスタマーハラスメント)が、殺人にまで至るという究極の終末を迎えてしまいました。
お客様は神さまではない
接客サービス中心にカスハラに悩まされる企業に対し、長年私はこの言葉を訴え続けています。三波春夫さんの言葉を本来の意味を変えてまで自分に都合良く解釈するモンスターと、「店はお客様のためにある」的な精神論を、時代環境を無視して唱える経営者、その多くはもはや現場から遠く離れた豪奢な生活を送れるオーナー一族の自己満足になっているのです。
医療機関ではただでさえ体調の不良があることに加え、自由にならない身体やそのためのストレスから不満もあることでしょう。しかし常識の通じないモンスターは、ここで我慢することや状況を理解するようなことはしません。
そのまま現場スタッフにぶつけてきます。自分が予約もせず待ち時間が長いと受付に詰め寄ったり、素人情報やネット情報が正しいと医療者に反論したり、中には診察料を踏み倒す、完全な犯罪すらあるといいます。
「患者様」という誤謬
ここ10年くらい、医療機関などの接客サービスは目に見えて向上したと思います。同時に患者のことを「患者様」と呼ぶ機関も激増しました。
医師や医療者が上で、患者が下という意味では全くありません。上も下もないのは当然です。しかし必要以上に実態にそぐわない接客向上の結果、「患者様」という気持ち悪い言葉が生まれたのではないでしょうか。呼び方の問題とホスピタリティはイコールではありません。またそこには行動基準の優先順位もあり、呼び方など些末な要素に過ぎないものの、一見してわかりやすいことでここまで広がったのではないでしょうか。
「患者様」という言葉は必要以上に患者の立場を誤解させた恐れがあります。本質は上も下もなく、常識をもって、サービスを提供する・受けるという、当たり前の関係性を理解できない人間は、この殺人犯のように確実に存在します。
また「患者様」と呼んだかどうかと本来のホスピタリティは何の関係もありません。口先だけの敬語には何の意味もなく、また医者は聖人でなければならないものでなく、医療を提供することが業務です。
医療者ゆえに無料奉仕やホテルのようなサービスを提供する義務など絶対にありません。
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