人気レジャー施設が「現地払いのWeb予約」をやめただけで、売り上げ2.5倍以上に──なぜ?:PANZA宮沢湖(1/3 ページ)
「ファンモック」という空中アスレチックが楽しめるPANZA宮沢湖では、予約システムを見直し「現地払いのWeb予約」をやめたことで、月商が平均して2.5倍以上になった。なぜそれほどの効果があったのか? 話を聞いた。
PANZA宮沢湖は、2019年4月に埼玉・飯能市にオープンしたアドベンチャーパークだ。施設内では「ファンモック」という空中アスレチックが楽しめる。森の中に張り巡らしたネットの上で揺られながら寝転んだり飛び跳ねて浮遊感を味わったりと、自分なりの方法で過ごせ、子どもから大人まで利用できる。
長引くコロナ禍の中、自然豊かな土地に出掛けて「非日常を気軽に味わえれば」と集まる人も多いだろう。コロナ禍でも人気は絶えず、安定して利用者が訪れている。
このPANZA宮沢湖では、予約システムを見直し「現地払いのWeb予約」をやめたことで、月商が対前年比で平均157%、最高値の月では272%もアップしたという。つまり売り上げが平均して2.5倍以上にもなった。なぜそれほどの効果があったのか? PANZA宮沢湖マネジャー、太田翔平さん(プロジェクトアドベンチャージャパン社)に話を聞いた。
“ノーショー”“現地払い”が生んでいた負の連鎖
PANZA宮沢湖はオープン当初から、大手予約サイト経由での予約など、さまざまな予約方法を取り入れていた。しかし、システムから予約できるのは来場する時間枠だけ。支払いは現地払いしか対応していなかった。それが原因で、ノーショー(無断キャンセル)や受付時間の長さに悩まされてきた。
PANZA宮沢湖のある場所は、東京近郊。人気の「ムーミンバレーパーク」が隣接している。そのため、休日ともなると周辺道路は交通量が多くなり渋滞がたびたび生じる。また、最寄りのインターチェンジがある圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、渋滞の起こりやすい高速道路としても知られている。
渋滞や、スケジュール変更などが原因で、時間に間に合わない人は一定数いる。予約時点で料金が発生しないため、連絡をしないノーショーの割合はどうしても高くなる。
太田さんは「遅れるという連絡をいただければ、空いてしまう枠は当日受付分に回し、予約ゲストには次の枠に入ってもらえて無駄がありません。しかし、連絡なしで遅れたりキャンセルされたりするとそれもできません。本来遊んでもらえるはずの施設に人が入らず、売り上げも立ちません。機会損失につながっていました」と説明する。
また、受け付けでの支払いに時間がかかっていた。「プレイ開始の15分前には来ていただくように案内していますが、1組を通すのに3分かかってしまいます。理由は、クレジットカード決済端末の起動など、決済に時間がかかるからです。そのうえ、遊ぶための同意書などへ記入してもらう必要もあります」と太田さんは話す。
「1つの時間帯に10〜15組入場できますが、1組3分の受け付けを済ますだけで45分近くかかってしまいます。それから施設の利用にあたる説明を全員に行って……となると、ゲストとしては遊べる時間が短い、待ち時間が長い、と負の感情を抱くことになります」
現場で働くスタッフにも、長時間列に並ぶゲストを前に、急いで受け付けをしなくてはならないというストレスがかかっていた。
さらに「現地払いでは、利用料金を高く感じがちです」と太田さんは続ける。「予約時に決済できるシステムなら、詳細を確認して納得の上、お金を払うけれど、なんとなく時間枠を押さえた、近くまで来たから寄ってみた、という場合では、料金への納得感が得られず、高価な印象を持ちがちです。当日に、時間を短くして安いプランに変更されるお客さまも一定数いました」と、現地払いが原因で生じる課題について語った。
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