クレカ積立を大転換する楽天証券 楠雄治社長が語る狙いと背景:金融ディスラプション(3/3 ページ)
楽天証券の戦略が転機を迎えている。新規顧客を獲得する最大の武器だったクレジットカードによる投信積立について、ポイント還元率を従来の1%から、多くのファンドで0.2%まで引き下げる。この背景には何があったのか? 楽天証券の楠雄治社長に聞いた。
「楽天モバイルは関係ない」
ポイントを使った新規獲得メインの戦略から、エンゲージメント強化の戦略へ転換するという楠氏。では、エンゲージメント強化とはいったい何か。
「投資は人生のうちの1つの領域でしかありません。
証券会社は、商品を売っている、商品売りです。商品売りである限りは、マーケットとの勝負になってしまいます。しかし、必ずしも金融商品を売買したくて投資している人ばかりではありません。将来のためにそれを活用して、安定を得たいと思っている人もたくさんいます。
商品自体はあまり差別化できません。取り組むべきは、永いライフタイムを前提にした、金融サービスを活用したソリューションを、どう提供していけるか。だから従来とは違う考え方でやっていかないといけません。新たに始める家族プログラムでも、いくつか金融以外のサービスとの連携も考えています。グループの強みを活用していきます」
上場投資商品を扱う限り、どこで購入しても中身は変わらない。身を削る価格競争になりがちだ。であれば、商品自体の違いではなく、付加サービスで戦うという宣言だ。
概要発表済みの「家族プログラム」では、家族の楽天証券口座を登録することで、手数料の還元や、楽天市場で使えるクーポンの配布、楽天グループ各サービスで使える特典を提供する計画だ。
最後に、巷(ちまた)でささやかれる、「楽天モバイルの赤字をカバーするために各所でポイント還元が改悪されている」という指摘を楠氏にぶつけてみた。
「楽天モバイルがどうだから……という話ではありません。楽天証券として、自己資本規制比率の低下や、販管費の増加などで、入りと出のバランスが悪い状態だったため、当社の経営を維持するために判断しました。楽天モバイルの事情は全然関係なく、1つの証券会社として、今後もしっかり利益を出していくことを最優先させていきます」
なるほど、証券業は厳しい規制の下に営まれるビジネスであり、そこで重視されるのは経営の独立性だ。親会社といえども、経営の方向性について影響を与える立場にない。楽天モバイルの状況以前に、証券会社として経営を安定させることが急務だったということだ。
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