なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと:「実証実験」の結果(3/4 ページ)
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。
意外に多かったポジティブな反応
さて、三宮でどんな実験をしたのだろうか。3人乗りの自動走行を用意して、私有地である銀行敷地内をゆるゆると動くことにした(手動で動くタイプも走行した)。直線の距離は80メートルほど、道幅は10メートルほど。モビリティスポットからスタートして、折り返し地点に到着すると、くるっとターンして戻ってくる流れだ。
実験を始めるにあたって、財津さんは懸念をひとつ抱いていた。自動運転に慣れている人は少ないので、「iino」に乗って「怖いなあ」「危険だ!」と感じる人が増えるのではないかと。先述したように、このモビリティは時速5キロで走行することができる。ただ、実験場の人流の多さなどを考えて、時速は1〜2.6キロに設定した。
数字だけを見ると、「ちょーゆっくりじゃないか」と思われたかもしれないが、実際に乗ると想像以上に速く感じる。立って乗ること、風を感じること、慣れていないこと。この3つが重なって、ネガティブな印象を受ける人が多いのかと心配していたが、杞憂(きゆう)に終わる。利用した人にアンケートを実施したところ、ポジティブな声が多かったのだ。
個人的に「街中で広がれば、面白そうだなあ」と感じているが、実現にあたって大きな壁が2つある。それは「安全性」と「法律」だ。安全性についてはどうか。自動運転システムを搭載しているので、何かに当たる前に減速したり、停止したりする。もし当たっても、のろのろ運転である。大きな衝撃を感じることはないので、大事故につながる危険性は低い。しかし、問題は「歩道」である。
人が歩くスピードは違うし、前からも後ろからも横からも斜めからもやって来る。走っている人もいるし、立ち話をしている人もいる。繰り返しになるが、センサーを搭載しているので、こうしたシーンでもするすると避けながら走行する。ただ、ひとつ気になったことがある。前から歩いてくる人を避けることはできる。その人を避けても、また前からやって来るかもしれない。その人を避けても、また前から……といった感じで、混雑しているところであれば、避け続けなければいけないのだろうか。
「『iino』に乗っている人を弱い存在で、かわいいと感じてもらうことはできないか。そのように感じてもらうことで、周りの人たちのほうから避けてくれるかもしれません。そのためには何が必要なのか。見た目をかわいくしたり、音を出したり、さまざまな工夫を重ねることで、安全性を確保したいですね」(財津さん)
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