DXは時期尚早!? サイゼリヤがコロナ禍で進める”アナログ戦略”が生んだ想定外の効果:アナログの進化を優先(3/3 ページ)
外食チェーン大手のサイゼリヤは、新型コロナ感染症拡大の影響で苦しむ多くの飲食店を尻目に出店を加速し、2022年度は2年ぶりの黒字化を目指している。コロナ禍でDX推進を掲げる飲食店が増える中、同社は「時期尚早」と判断している。コロナ禍をものともしないサイゼリヤ独自の「アナログ戦略」に迫る。
コンビニ跡地に出店 勝機はあるのか?
サイゼリヤは、コロナ禍にあった19年12月〜20年12月にも店舗数を増やしており、現在は国内に約1100店舗を構える。外出自粛による業績不振から“一等地”の店舗を手放す飲食店もある一方、イートインにこだわるサイゼリヤにとって、そういった好立地の店舗は狙い目だ。
堀埜社長によれば「撤退する店舗もあるので、出店数は増加分を上回る」とのこと。撤退の理由はテナント契約の満了だという。「2000年代初めの勢いで出店したところには、標準店の1.5倍、約180席を超える店舗もあり、オペレーションに苦労していた。そうした店舗は契約満了を機に適切な場所に再出店している」(堀埜社長)
また堀埜社長が新規出店先として狙っているのが、コンビニエンスストアの跡地だ。既存のレストランやコンビニが撤退するエリアでビジネスが成立するのかという疑問は残るものの、「撤退の理由は売り上げの不振によるものだけではない」(堀埜社長)と自信ありげ。
実際、21年4月には「サイゼリヤ地下鉄赤塚店」(東京都練馬区)をオープンした。同店はローソンの跡地に出店したもので、店舗面積は約120平方メートル(44席)と、標準店の半分以下となっている。
そうした小規模店舗で売り上げを伸ばす秘策が、冷凍食品の販売だ。サイゼリヤでは冷凍の「業務用辛味チキン(1.5キログラム、2200円)」のほか、「ポップコーンシュリンプ(500グラム、1500円)」「ティラミス クラシコ ファミリーサイズ(6人分、1760円)」などをテークアウトメニューとして販売しているが、小規模店舗ではそれらの販売にも力を入れていくという。「この業態で収益が出せれば、地方のコンビニ跡地などに出店できる可能性が広がる」(堀埜社長)。
また、サイゼリヤは「ファストカジュアルレストラン」と銘打った新業態の小型パスタ専門店「伊麺処(パスタドコ)」を20年2、6月に東京・浅草および新宿に出店したほか、11月には看板メニューである「ミラノ風ドリア」を中心に提供する「ミラノ食堂」を東京都中央区に出店した。伊麺処やミラノ食堂も50席程度の店舗規模であることから、それら小規模店舗はコンビニ跡地を狙うための布石とみてよさそうだ。
飲食店がこぞってDXを推進し、イートインからデリバリー中心にシフトする店舗が目立つ。サイゼリヤの戦略は“逆張り”にも見えるが、堀埜社長は「政府からの時短営業要請を受けて深夜営業をやめる、時短営業の影響でパート・アルバイトの生活が不安定になるなら正社員として雇用する。“逆張り”どころか極めて順当な戦略です」と笑った。
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