ホリエモン自ら会社説明 宇宙ベンチャーISTが求める人材と新時代の働き方:エンジニアが舞台裏語る(3/5 ページ)
北海道大樹町に本社を置く宇宙開発ベンチャー、インターステラテクノロジズは、人材を集めるべく、三大都市圏で会社説明会を開いた。稲川貴大社長や、ファウンダーの堀江貴文氏をはじめ、同社の主要開発スタッフ5人が登壇。2021年7月の2回連続ロケット打ち上げ成功の舞台裏が明かされた。
エンジニアが語る宇宙到達の舞台裏
続いて稲川社長は、民間宇宙開発の歴史についてこう振り返る。
「スペースシャトルは大成功したかのように思われていますが、実は違います。お金がかかりすぎたり、大きな事故を起こしたりしました。GDPの何%を宇宙予算に入れていた米国ですら、宇宙開発は停滞してしまった時期があります。そのような経緯があって現在では民間に委ねている動きがあるのです。
日本ではJAXAが頑張っていたところもあり、なかなか民間主導で宇宙開発をする時代は訪れませんでした。だからISTが創業した13年当時も『日本では民間の時代は来ないんじゃないか』という声が多かった部分があります。ところが近年は、国内でも徐々に産官学が連携して民間にシフトする動き出ていて、日本の民間ロケット開発はまだ始まったばかりという状況です」
その後、主要エンジニアスタッフによる座談会が開かれた。宇宙機器メーカーで10年以上にわたって搭載機器の開発に従事したのち、ISTに転職した開発部の中山聡さんが司会を務め、21年7月の2回連続ロケット打ち上げ成功の舞台裏が明かされた。
システムを担当した山中翔太さんはMOMO・ZERO総合システムの他、技術の取りまとめを担当している。
「一言で言うととても安心して飛ばせるようになりました。そのために、『MOMO』を改良した『MOMO v1』というロケットを飛ばす段階で強度などを徹底的に解析・試験しました。だからv1を打ち上げる時には『普通に打ち上げれば成功するよね』と自信が持てる、強固で堅実な機体にすることができました」と手応えを語った。
一方、構造設計を担当した安晋一さんは「システムのチームからは良い意味でめちゃくちゃいじめられた」と笑う。「でもそこまでしないと品質が上がらないことも分かっているから、なんとか応えられたし、機体構造の完成度はかなり高くなりました」と話す。
機構系部品を扱うメカトロニクスグループの山岸尚登さんは、前職では本田技術研究所で量産二輪車やレース用二輪車の燃料系・吸気系の設計、電動モビリティを開発した経歴を持つ。
「20年の12月に開発のチームに入りました。ただ、開発チームがまだまだ他のグループと足並みをそろえきれておらず、この状況で本当に夏に打ち上げられるのかと半信半疑でした。でも開発をしていくうちにだんだんとチームワークがかみ合うようになり、成功につなげることができました」と胸を張った。
関連記事
- ホリエモンが明かす「民間ロケットとLinuxの共通点」 宇宙開発で今、切実に足りていない人材とは
ホリエモンこと堀江貴文氏に単独インタビューを実施。なぜ今、ロケットの民間開発が必要なのか、そして何が一番の課題なのか。その問題点を聞いた。 - ホリエモンが北海道で仕掛ける「宇宙ビジネス」の展望――くだらない用途に使われるようになれば“市場”は爆発する
ホリエモンこと堀江貴文氏が出資する北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズが5月2日に予定していた小型ロケット「MOMO5号機」の打ち上げを延期した。延期は関係者にとっては苦渋の決断だったものの、北海道は引き続き宇宙ビジネスを進めていく上で優位性を持っており、期待は大きい。そのことを示したのが、2019年10月に札幌市で開かれた「北海道宇宙ビジネスサミット」だ。登壇したのは、同社の稲川貴大社長と堀江貴文取締役、北海道大学発ベンチャーのポーラスター・スペースの三村昌裕社長、さくらインターネットの田中邦裕社長、北海道大学公共政策大学院の鈴木一人教授。 - 宇宙ベンチャーISTが直面した組織における「50人の壁」 ロケット打ち上げ2回連続成功を支えたマネジメントとは?
ロケットの開発から打ち上げまでを一貫して自社で担い、大樹町のまちづくりにも関わるインターステラテクノロジズは22年も大きく成長しようとしている。稲川社長にISTのロケット打ち上げ成功の背後にあった「50人の壁」と、それをどんなマネジメントによって乗り越えているか、そして今後の展望を聞いた。 - ホリエモンが斬る「ビットコインで大損した人たちを笑えない事情」
「日本の義務教育で行われている教育の大半は、意味がない」と語るホリエモン。「ビットコインで大損した例は、笑い話ではない」と話す。 - ホリエモンが「次の基幹産業は宇宙ビジネスだ」と断言する理由
北海道大樹町で観測ロケットと超小型衛星打ち上げロケットを独自開発しているインターステラテクノロジズ。同社ファウンダーのホリエモンこと堀江貴文が宇宙ビジネスが自動車産業などに代わって日本の基幹産業になる可能性を語る。日本が持つ技術的・地理的なポテンシャルの高さがあった。 - 堀江貴文に聞く インターステラテクノロジズと民間宇宙ビジネスの現在地
日本でいち早く民間による宇宙ビジネスに取り組んできたのが、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏だ。堀江氏が創業したインターステラテクノロジズは観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」」で、国内の民間ロケットで初めて宇宙空間に到達した。ITmedia ビジネスオンラインは堀江氏に単独インタビューを実施。「世界一低価格で、便利なロケット」の実現を目指すISTの現状や、ゼロからのロケット開発を可能にした背景について聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.