対露制裁で「1ルーブル=1円以下」続く ウクライナ情勢長期化、日本経済への影響は?:専門家に聞く(2/2 ページ)
米国やEUを中心とした欧米諸国がロシアに課した経済制裁の影響で、同国通貨「ルーブル」のレートが急激に下落し、「1ルーブル=1円以下」の状況が続いている。日本経済への影響度合いを専門家に聞いた。
日本への影響は「一時的」
ルーブル安は日本経済にどのような影響を与えるのか。市川氏は「ロシア経済の混乱が日本経済に与える影響は一時的」と推測する。
その根拠として市川氏が指摘するのが、日本の対露貿易の規模の小ささだ。財務省の貿易統計(2021年)によると、日本の輸出入総額全体に占めるロシアの割合は、輸出が約1.04%、輸入が約1.82%と、割合ではそこまで大きくはない。
日本の対露貿易での輸出総額は約8600億円で、主な輸出品目は自動車(41.5%)、自動車部品(11.6%)、ゴム製品(5.4%)。輸入総額は約1兆5400億円で、主な輸入品目は液化天然ガス(LNG、24.1%)、非鉄金属(18.9%)、石炭(18%)、原油(16.7%)だった。
こうした状況から市川氏は「一時的に貿易には影響出るが、他のルートである程度、代替可能。時間の経過とともに落ち着いていくだろう」とし、日本経済全体へのダメージは限定的との見方を示した。
原油価格高騰 原材料価格への影響も
一方で、ウクライナ情勢の長期化やルーブル安などの影響で、原油価格の高騰が続いている。市川氏は「原油価格が相当な勢いで上昇している。仮に高止まりした場合、原材料価格の高騰につながる可能性がある」と警戒感を示す。
市川氏は影響が出る可能性が高いものとして、ガソリン価格やクリーニング代、化学製品、紙、海産物などを挙げる。「電気代やガス代にもじわじわ影響が出る可能性がある」としつつ「代替ルートの確保で解消されるため、影響は短期的ではないか」とした。
対露制裁で世界経済は1.28%のマイナス成長か
ウクライナ侵攻の長期化とルーブル安は、世界経済に与える影響力はどの程度なのか。三井住友DSアセットマネジメントはロシアが中国のみと貿易した場合、世界経済の対GDP成長率を1.28%押し下げると試算。日本が対露貿易を停止した場合は、同マイナス0.5%になるという。
日本海で合同軍事演習を行うなど、事実上の軍事同盟を結んでいる中国がロシアとの貿易関係を解消する可能性は低いものの、仮に中国も主要国の動きに同調し、ロシアとの貿易を停止した場合は、影響はさらに拡大するとみられる。
影響は限定的とは言え、一時的には日本経済に影響を及ぼす、ウクライナ情勢。日本政府は、欧米諸国と同様に、国際決済網「国際銀行間通信協会」(SWIFT)からロシアの主要銀行を排除する方針を示しているため、今後、同国との資金決済が困難となる。
市川氏は日本企業に対し「ロシア以外の輸出先や輸入先を迅速に見つけることが重要だ」と呼び掛けた。
話し手:市川雅浩(いちかわ・まさひろ)
旧東京銀行(現三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり、情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。ITmedia ビジネスオンラインで「市川レポート 経済・相場のここに注目」を連載中。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
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