業界トップの「イセ食品」に衝撃! なぜ卵のように転がり落ちたのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「森のたまご」などで知られるイセ食品が、債権者から会社更生法を申し立てられた。鶏卵業界のトップがなぜ追い詰められたのか。背景に“つくりすぎ問題”があって……。
伝統的なビジネスモデルが崩壊
このように本業だけにとどまらず、異業種参入も積極的に行って事業拡大していた企業が債務超過に陥ったのだ。「コロナが悪い」「鶏卵場の経営は難しい」という類の話ではないことは明らかだ。
アキタフーズ元代表の汚職も同じことが言える。
一時期大きく報道されたので覚えている方もいるだろうが、秋田元代表は法廷で、吉川元農水相に500万円を手渡した理由を問われて、「業界のため」「業界の諸問題を支援してほしい」とはっきりと証言されている。
では、それは具体的に何かというと、国際機関が策定した鶏の飼育基準案「アニマルウェルフェア」に対して、吉川元農水相に「反対」のスタンスを取って、政治家センセイたちのお力でなんとか握りつぶしてもらいたいということだ。
欧米では人間が動物に対して与える痛みやストレスを最小限に抑えるなどの配慮をすべきだというアニマルウェルフェア(動物福祉)が浸透していて、養鶏に関しても、EUでは狭いケージでの飼育は禁止、米国でもマクドナルドやコストコなど大手企業が「ケージフリー」飼育の卵への切り替えを宣言している。
しかし、日本の採卵鶏はケージ飼育が基本だ。鳥インフルエンザが発生した際の資料映像などで見たことがあるだろうが、狭いケージに多くの鶏がすし詰め状態で入れられて、そこから首を出した鶏に餌を与えて卵を産ませていく「工場」のようなスタイルだ。
日本側は「こっちのほうが衛生的だ」とか「自由に動き回ると弱い鶏がいじめられて餌が食べれない」なんて反論しているが、それはあくまで建前で、本音としては、「広いケージや平飼いより、狭いケージに押し込めたほうが遥かに効率的でたくさんの卵が生産できる」ということに尽きる。
要するに、「狭いケージ」が禁止されてしまうと、日本の「過剰生産を前提としたビジネスモデル」が成り立たなくなってしまうのだ。
だから、秋田元代表はアニマルウェルフェアの上陸をなりふりかまわず食い止めていたのである。その必死さは、吉川元農水相にとどまらず、農水省事務次官などの幹部に対しても「接待」をしていたことからも分かる。畜産部長に至っては、自身が所有するクルーザーに招いて豪華な接待もしている。
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