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業界トップの「イセ食品」に衝撃! なぜ卵のように転がり落ちたのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

「森のたまご」などで知られるイセ食品が、債権者から会社更生法を申し立てられた。鶏卵業界のトップがなぜ追い詰められたのか。背景に“つくりすぎ問題”があって……。

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もがき苦しんだ結果の転落

 さて、ここまで言えば筆者が、イセ食品とアキタフーズの転落を引き起こした遠因に、「たまご過剰生産問題」があると考える理由がなんとなくご理解いただけのではないか。

 人口減少によって「たまごを大量に生産してたくさん売っていく」というビジネスモデルが崩壊の兆しが見えてきたなかで、業界トップのイセ食品は、かつて米国で栄冠をつかんだ「攻めの拡大路線」で乗り越えようとした。消費者が減っても、それを上回るだけの過剰生産を続ければ窮地を脱せるはずだというわけだが、残念ながら資金繰りが行き詰まってしまった。

 一方、ナンバー2のアキタフーズの秋田元代表はこのビジネスモデルの危機を「政治の力」で解決しようと考えた。「たまごを大量に生産してたくさん売っていく」というこれまで通りの拡大路線が続けられるように、自民党農水族や農水省幹部に現金をバラまいて働きかけた。

 つまり、イセ食品も秋田元代表もアプローチの方法は異なるが、実は「たまご過剰供給問題」を乗り切ろうと、もがき苦しんだ結果の転落だったというわけだ。

 「鶏卵業界も大変だなあ」と感じる方もいるだろうが、実はこの問題を引き起こしているのはわれわれ消費者でもある。ご存じの方も多いだろうが、海外では卵の価格はもっと高い。しかも、白飯に生卵をかけて食べれるほど高い品質ではない。

 ここまで「質のいい卵が異常なほど安く買える」というのは、ひとえにイセ食品やアキタフーズという大企業が鶏卵業の大規模化を推し進めてくれたからだ。先ほど、鶏卵の生産量が260万トンまで増えていると言ったが、その背景で、11年に2930戸あった採卵飼養戸数が19年には2120戸まで減っている。小規模な鶏卵生産者が廃業に追い込まれていることうかがえるのだ。

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