山崎直子さんに聞く日本のスペースポートの展望 アジアの宇宙輸送のハブを目指す:北海道から宇宙へ(1/4 ページ)
日本各地のスペースポートは、将来的にはアジアにおける宇宙旅行も含めた宇宙輸送のハブになることを目指す。この動きをバックアップするのが一般社団法人Space Port Japanだ。山崎直子代表理事に日本のスペースポートへの期待や課題を聞いた。
民間による宇宙ビジネスが、米国を中心に世界中で拡大している。小型人工衛星の打ち上げ需要は急増し、民間ロケットによる有人宇宙飛行も現実となった。宇宙ビジネスの規模は現在の約40兆円から、30年後には100兆円を超えるとみられている。
その未来を見据えて、日本でもスペースポート(宇宙港)の整備が本格的に始まった。2021年4月には北海道大樹町に北海道スペースポート(HOSPO)が稼働。7月には宇宙ベンチャーのインターステラテクノロジズが観測ロケットを2回打ち上げ、いずれも宇宙空間に到達した。国内では他にも和歌山県、大分県、沖縄県などがスペースポートの候補地として準備を進めている。
日本各地のスペースポートは、将来的にはアジアにおける宇宙旅行も含めた宇宙輸送のハブになることを目指す。この動きをバックアップするのが一般社団法人Space Port Japanだ。代表理事には宇宙飛行士の山崎直子氏が就任している。ITmedia ビジネスオンラインは山崎氏に単独インタビューを実施し、日本のスペースポートへの期待や課題を聞いた。
山崎直子(やまざき なおこ)一般社団法人Space Port Japan代表理事。2010年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)組立補給ミッションSTS-131に従事した。2011年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)退職後、内閣府宇宙政策委員会委員、一般社団法人Space Port Japan代表理事、公益財団法人・日本宇宙少年団(YAC)理事長、環境問題解決のための「アースショット賞」評議員などを務める
アジアにおける宇宙輸送のハブを目指す
「宇宙ホテルでの滞在、月や火星への旅行、宇宙経由での地球2地点間移動など。人類が夢見た宇宙への旅が、いつかの空想ではない時代に。煌めく宇宙と青い地球が眼前に広がるサブオービタル飛行は、もうすぐあなたの現実になります」
こう記されているのは、一般社団法人Space Port Japanが21年6月に発表した「スペースポートシティ」構想図だ。スペースポートを軸にした架空の都市構想で、人工衛星と人が両方とも離発着できるスペースポートと、その拠点となるまちづくりのビジョンが描かれている。Space Port JapanのWebサイトで公表している。
Space Port Japanが設立されたのは18年7月。創業メンバーで代表理事を務める山崎氏は、組織の役割を次のように話す。
「日本に複数のスペースポートを整備できるように、プラットフォームの役割を担う非営利型の組織です。現在は約50の民間企業と、約10の自治体が会員になっています」
スペースポートとはどういうものなのか。山崎氏は「日本ではまだ具体的な定義がない」と前置きしながら、地球上の2地点間輸送のハブになる場所と説明する。
「先行している米国では、ロケットやスペースプレーン(編注:航空機と同様に特別な打ち上げ設備を必要とせず、自力で滑走し離着陸および大気圏離脱・突入を行うことができる宇宙船)の打ち上げや帰還の場を含めてスペースポートと定義しています。米国ではすでに13のスペースポートがFAA(Federal Aviation Administration=アメリカ連邦航空局)から認可を受けました。
宇宙旅行ビジネス企業のヴァージン・ギャラクティックが拠点にしているニューメキシコ州のスペースポート・アメリカは、宇宙旅行のために必要な設備が整っています。テキサス州のヒューストンでは都市型のスペースポート、コロラド州では大自然を生かした観光型のスペースポートの整備が進んでいます。
ロケットやスペースプレーンが運ぶのは、人工衛星や人です。人については宇宙旅行に加えて、ニューヨークとアジア圏を40分で結ぶなど、2地点を結ぶ移動手段としての輸送も視野に入れています。日本のスペースポートはアジアの中でのハブを目指しています」
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