山崎直子さんに聞く日本のスペースポートの展望 アジアの宇宙輸送のハブを目指す:北海道から宇宙へ(4/4 ページ)
日本各地のスペースポートは、将来的にはアジアにおける宇宙旅行も含めた宇宙輸送のハブになることを目指す。この動きをバックアップするのが一般社団法人Space Port Japanだ。山崎直子代表理事に日本のスペースポートへの期待や課題を聞いた。
日本から年間20機のロケットの打ち上げが可能に
宇宙ビジネスは今後急速に拡大し、現在の約40兆円から、30年後には100兆円を超える規模に成長するとみられている。ロケットと小型人工衛星の打ち上げは、すでに需要が高まっており、供給が追い付いていない状況だ。
「今のところ日本で打ち上げられているロケットの数は、年間に5機から10機くらいです。これまではJAXAが鹿児島県の種子島宇宙センターや内之浦宇宙空間観測所で打ち上げるロケットが中心でした。それが5年後から10年後にはスペースポートの活用によって、民間のロケットも含めて年間20機くらいが打ち上げられるようになるでしょう。
もう少し長いスパンで考えると、米国が中心となって進め、日本も参加している有人宇宙飛行計画のアルテミス計画があります。そうなると、建設業やロボット、衣食住などに関わるさまざまな分野の企業が宇宙産業に参入できるようになります。もっといろいろな企業に、宇宙に興味を持ってほしいですね」
山崎氏は10年、スペースシャトル・ディスカバリー号に宇宙飛行士として搭乗。国際宇宙ステーションに滞在して、組立補給ミッションなどに従事した。自身の経験から「宇宙は特別な場所ではない」と感じており、スペースポートによって宇宙がより近い存在になると確信している。
「宇宙に滞在して印象深かったのは、案外住める場所だったことです。宇宙に行く前は特別な場所だと思っていたのですが、実際に生活すると慣れていきます。重力の違いを受け入れて、宇宙食を食べて、夜は寝袋で寝る生活をしていると、それが新しい日常になり、ニューノーマルになっていきます。
そういう経験からも、宇宙と地球はこれからどんどんつながっていくと感じています。すでに地上の技術で、宇宙で使われているものもたくさんありますし、逆に宇宙の技術が地上でスピンアウトされているものもたくさんあります。これからもっと結びついていくでしょう。
その際に拠点になるのがスペースポートです。スペースポートを整備することによって、企業や人を結び付けるプラットフォームができます。もちろん、地域の方の理解と支援がないとできないことです。皆で連携をとり、宇宙産業が将来成長していく産業だということを知ってもらって、多くの人に応援してもらいたいですね」
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