導入済はわずか1割未満 6割が「必要なし」 日本企業がスルーして損しがちな「メリットだらけの制度」とは:5つのメリット(3/4 ページ)
さまざまなメリットが期待できる「勤務間インターバル制度」。現在はあくまで努力義務にすぎないが、今後は法制化も十分あり得る。まだまだ導入が進まず、「必要なし」とする企業も多いのは非常にもったいない状況だといえるが、なぜなのか。
1つ目は、生産性の向上です。勤務間インターバルが十分に確保できれば、もし突発的な長時間残業が発生したとしてもゆっくり休み、疲れをとってから出社できます。睡眠不足や体調不良を回避し、安定的に仕事に集中できる環境づくりは生産性向上に寄与するはずです。
2つ目は、社員の健康保持です。毎日ゆっくり休むことができれば、社員は心身の健康を保ちやすくなります。それが社員の福利厚生や幸せにつながるのはもちろん、体調不良で仕事に穴が空いてしまうような事態を防止する効果なども期待できます。
3つ目は、リスク回避です。冒頭で触れた運輸業などは、睡眠不足や体調不良が重大事故を引き起こしてしまうことさえありえます。その結果、会社自体の存続を揺るがすほどのリスクを背負うことにもつながりかねません。勤務間インターバル制度は、そんなリスクから会社を守ります。
4つ目は、退職防止です。毎日十分な休息がとれる職場であれば、社員は安心して働き続けることができます。勤務間インターバル制度を導入すれば、入社後の十分な休息確保を保証でき、定着率が高まることが期待されます。
最後は、採用優位性です。十分な休息を保証してくれる会社の方が、そうでない会社より求職者にとっては魅力的に映るはずです。勤務間インターバル制度を導入している企業の比率は、5%に届きません。今なら制度を導入するだけで採用市場において稀有(けう)な存在となり、差別化を図ることができます。
実は既に多くの会社で実現済み?
6割近い会社に、これらのメリットを支障なく享受できる可能性があるのです。いや、6割どころかもっと多いかもしれません。勤務間インターバルが多くの会社にとって導入しやすい制度であることを示すデータは他にもあります。令和3年就労条件総合調査に掲載されている「終業時刻から始業時刻までの間隔が11時間以上空いている労働者の状況別企業割合」を表にすると、以下の通りです。
「全員」と「ほとんど全員」を合わせると68.4%、「4分の3程度」まで入れると75.2%にも及びます。このデータを見る限り、大半の会社は既に十分な勤務間インターバルが空いており、制度化してもほぼ支障が出ない状況にあると考えられるのです。
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