導入済はわずか1割未満 6割が「必要なし」 日本企業がスルーして損しがちな「メリットだらけの制度」とは:5つのメリット(2/4 ページ)
さまざまなメリットが期待できる「勤務間インターバル制度」。現在はあくまで努力義務にすぎないが、今後は法制化も十分あり得る。まだまだ導入が進まず、「必要なし」とする企業も多いのは非常にもったいない状況だといえるが、なぜなのか。
(2)残業ありきの給与評価
「残業ありきの給与評価」は、勤務時間に応じて給与が支払われる会社で生じる構造的な阻害要因です。勤務時間に応じて給与が支払われると、残業すればするほど収入が増えることになります。仕事の中身ではなく遅くまで残業する姿を「根性がある」「頑張っている」などと評価する会社は、長時間労働が常態化します。そんな会社で勤務間インターバル制度を導入しようとしても、勤務できる時間が狭まることへの抵抗感が強くてスムーズに事が運びません。
(3)前例ありきの組織運営
「前例ありきの組織運営」をする会社は、自社はもちろん、他社でもほとんど事例がないというだけで、勤務間インターバル制度導入に対して消極的になります。メリットを感じたとしても、現行制度で特段の問題がなければあえて労力をかけて導入しようとはしません。変化を拒む組織構造です。こうした組織では、管理職など決定権を持つ者は変化を主導した際に思ったような成果が出ず、責任を問われることを嫌います。
ここまで挙げたような阻害要因は、いずれも一筋縄ではいかない障壁です。しかし、先ほど紹介した令和3年就労条件総合調査によれば、勤務間インターバル制度の導入予定がなく検討もしていない会社が挙げた理由のトップは、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」でした。
導入する必要性を感じないと回答した会社は57.4%と、6割近くいます。この理由を挙げている会社は、少なくとも組織構造上の阻害要因(1)と(2)には当てはまらないはずです。(3)さえクリアすれば、勤務間インターバル制度を支障なく導入できる可能性があります。
調査では、超過勤務の機会が少ない会社は「導入する必要性を感じない」となっていますが、導入すれば少なくとも5つのメリットを享受できる可能性があることにも、目を向けておくべきです。
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