キリンビールの「本麒麟」が好調 敏腕マーケターに聞く「売れ続ける理由」:酒税改正を見据えて(4/5 ページ)
キリンビールのビール類の販売量が減っている中、気を吐いているのが新ジャンル(第3のビール)の「本麒麟」だ。マーケティング本部の松村孝弘ブランドマネージャーに開発コンセプトを聞いた。
49円の価格差 ビールと第3のビールの違いは?
ビールの税金は現在77円、第3のビールは28円だ。両者には49円の価格差がある。つまり、キリンラガービールを愛飲してきた人にとっては、新ジャンルのビールに同じホップを使うことに複雑な思いを抱く人もいるはずだ。
「キリンとしては一番おいしいビール類を飲んでもらいたいというところで、ゼロベースで考えて作っているところがあります。値段という要素はあると思いますが、ブランドを愛してもらいたい思いがあります」
どちらも同じホップを使い、製造に力をいれているのであれば、例えば、キリンラガービールがいくら値下がりすれば本麒麟に、または本麒麟がいくら値上がりすればキリンラガービールに衣替えするのか。
「一概にはいえないのですが、ビール類の税率は23年、26年と段階的に1本化されます。価格は当社ではコントロールできませんので、ブランドイメージ、味などで満足できる世界を作っていくことが必要だと思っています」
他社は意識するのか。
「もちろん気にしていますが、一番気にしているのはお客さまの声です。お客様の声が一番だと考えています」
市場環境でいえば、筆者は新ジャンルを「デフレの象徴」と考えている。個人の給与が伸びれば、キリンラガービールやスプリングバレーばかりを売っていてもいいはずだ。つまり「日本が貧乏になったからこそ新ジャンルが誕生した」とも言える。どう考えているのか。
「おいしいものを味わいたい思いは皆さんあると思いますので、当社としては、選択肢を提示することが大事だと思っています。スプリングバレー、一番搾りもありますので、お客さまが一様に低価格を求めているというより、ビール類を通してお客さまの生活を豊かにするようにサポートしていくのが当社のスタンスです」
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