従業員10人の町工場が手掛けた「下町アーチェリー」 東京・江戸川区からパリ五輪へ:“日の丸アーチェリー”復活(2/6 ページ)
かつて世界に誇るアーチェリー専門ブランドがあった日本。バブル崩壊後の不景気や少子化などで事業撤退を余儀なくされ、“日の丸アーチェリー”は2000年代初頭までに事実上、消滅したが、約20年の時を経て、昭和感が残る下町の小さな町工場がそのDNAを引き継いだ。いかにして、国産アーチェリーは復活を遂げたのか。その舞台裏を取材した。
70メートル先の的を狙うアーチェリー
五輪でのアーチェリーは、70メートル先にある122センチの標的面を狙い、その合計点を競う競技。使用する弓は「リム」「ハンドル」(海外では「ライザー」とも呼ぶ)、「スタビライザー」「ストリングス」の大きく4つで構成される。
持ち手に当たるハンドルに、カーボンや木で作った板「リム」と「ストリング」(糸)を取り付け、リムのしなりで矢を飛ばす仕組みだ。発射時には、重りのような役割を果たすスタビライザーで弓全体を安定させる。
このうち同社が製造するのは、弓の中心部分を担うハンドルだ。完成までには、設計、削り出し、磨きの計3つの工程が必要だ。AIを搭載したシステムが3Dモデルで最適な設計図面を作成。設計データの数値を最新の専用機器に入力すると、削り出しと研磨を自動で行う仕組みだ。それぞれ1機約5000万円するといい、中小企業にとっては大きな投資だ。完成した製品は、人の目による品質チェックを経て、国内外に出荷される。
1度に削り出せるのは、アーチェリー1本。各工程に時間がかかるため「1日1本できれば、いいほう」と西川社長は話す。
西川製の主な特徴は、徹底したユーザー目線でのデザイン設計だ。独自機構で弓のブレを減らし、発射精度を向上させるとともに打ち心地の良さを実現した。人間工学の視点を用いた設計で、同社の調査によると、筋肉疲労度も他社製と比較して約14%減少したという。
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