ウクライナ侵攻の有事! できる法務は何をチェックしているのか(1/2 ページ)
昨今、ロシアのウクライナ侵攻により緊迫した状況が続いている。グローバル化が進む昨今、多くの企業が無関係ではいられない。対応に追われている現場も多いだろう。では、そんな中、法務担当は何をしなければいけないのか?
昨今、ロシアのウクライナ侵攻により緊迫した状況が続いている。グローバル化が進む昨今、多くの企業が無関係ではいられない。対応に追われている現場も多いだろう。では、そんな中、法務担当は何をしなければいけないのか?
戦争でどんな影響があるのか
今回のウクライナ侵攻のような戦争が起きた場合、該当国との企業の取引にはいくつかの影響がある。まず、経済制裁などにより該当国の国内経済が混乱し、発注の変更やキャンセルの要求がある可能性がある。さらには、発注企業が倒産してしまうリスクもある。
発注先が大丈夫でも、輸送も問題だ。今回のウクライナ侵攻でいえば、大手海運会社がロシア発着の貨物の引受を停止している。さらに、ロシアが領空内の航空機の飛行を禁じたため、航空便も大きく遠回りせざるを得ず、便数も半減している状況だ。
規制の問題も大きい。米国政府が経済制裁の一貫として、ハイテク製品の輸出規制に踏み切ると、ハイテク製品が組み込まれた工作機械などにも影響が及ぶ可能性がある。さらに国際送金ネットワークであるSWIFTからロシアが排除されたことから、ロシアとの取引で売掛金を回収できないリスクもあるのだ。
有事の際に法務がチェックすべきこと
ではこうしたリスクに備えて、法務担当者がチェックすべきことは何か。それは大きく3つあると、企業の法務向けに契約書チェックサービスを提供するLegalForceの佐々木毅尚CLO(チーフ・リーガル・オフィサー)は話す。
1つが、どの国の法律が適用されるのかという「契約書の準拠法条項(Governing Law Clause)」、そして2つ目がどの国の裁判所や仲裁機関で紛争解決するかを定めた「紛争解決条項(Jurisdiction and Dispute Resolution Clause)」、最後が「不可抗力条項(Force Majeure Cause)」だ。
不可抗力条項とは、合理的な支配を超えた事象の発生により債務の履行ができない、または債務の履行が遅延した場合に、債務者が債務不履行責任や履行遅滞責任を負わない旨などを定める条項。通常、天災、政府機関の行為もしくは命令、火災、洪水、台風、高潮、地震、戦争、反乱、革命、暴動、ストライキ、ロックアウト、パンデミックなどが対象として挙げられる。要は「注文に応えられないけど、戦争だから仕方ないので責任は負えません」ということを契約書に盛り込んだ条項だ。
準拠法条項と紛争解決条項は、海外取引における契約書では通常入っている。しかし不可抗力条項は意外に含まれない。「欧米企業との取引ではほぼ契約に入っている。しかし、日系企業や中国企業との取引では契約に入っていない場合がある」と佐々木氏。
これは判例と契約書を最重視する欧米に対し、日本では契約に記載されていないことも民法が細かく規定している点と、当事者で話し合って決めるという日本の文化が影響しているという。
逆にいうと、日本企業との取引のようなつもりで海外企業と契約を結ぶと、この不可抗力条項の有無が大きな落とし穴になるということだ。有事というのは戦争に限らず、例えば新興国であれば電力不足や水不足なども含まれる場合がある。各国のカントリーリスクを反映しているわけだ。
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