廉価版ではない? アップルが「iPhone SE」を続ける理由:本田雅一の時事想々(1/3 ページ)
iPhone SEシリーズは“廉価版”と表現されることも多いが、そのルーツや位置付けは廉価版とは少々異なる特殊なものだ。第3世代のiPhone SEはどのような意味を持つ端末なのだろうか。
アップルの新製品が世の中を揺るがすことも少なくなってきたが、それでも新製品発売が話題になるのは、生活の一部にもなっているスマートフォンなどデジタルデバイスのイニシアチブを、いまだにアップルが取り続けているからだろう。
シリーズ番号が振られたiPhoneの最新モデルが刷新されるのは毎年9月だ。春の新製品発表は、必然的にそれ以外の製品ジャンルとなるが、今春はiPhone SEの世代が一つ更新された。iPhone SEの最新世代投入は、iPhone 8の発売後、2年に1度のペースで続いている。
年間を通して最も多く販売されているともいわれるのが、このiPhone SEシリーズ。それだけに価格動向への注目が高く、報道では“廉価版”と表現されることも多い。しかしそのルーツや位置付けは“廉価版”とは少々異なる特殊なものだ。
このところ、携帯電話キャリアなどの販売戦略などによって、最新iPhoneが店頭で(条件付きとはいえ)安価に販売されることも多くなってきた中、第3世代のiPhone SEはどのような意味を持つ端末なのだろうか。
アップル製品の“SE”は、何の略なのか
“SE”というグレードは、iPhone以外にもApple Watchで採用されているネーミングだが、最初に使われたのはiPhone SEの初代モデルだった。2016年3月の発売当時は“Special Edition”の略であるとされていた(ただし、その後はSEの意味について元となる言葉を明言はしなくなっている)。
iPhoneの歴史を振り返ると、その設計にはいくつかの節目があった。13年9月発売のiPhone 5sがその一つだ。Touch IDを導入することで、指紋による信頼性の高い個人認証を装備し、金融アプリ/サービスなどでも利用されるようになった。
初代のコンセプトを拡張しながら完成度を高めていった一つの完成形、iPhoneとは何かを表現したモデルがiPhone 5sだった(その後、iPhoneはディスプレイの大型化、サイズバリエーション拡大へと向かっていく)。
このiPhone 5sのパッケージを踏襲し、当時最新の性能、通信機能を備えた端末が初代iPhone SEだった。当時のiPhoneの基本形ともいえるiPhone 5sは、いわば「必要な要素が全てそろったミニマルなiPhone」だ。そこで前年末に投入されたA9プロセッサと最新仕様のモデムの搭載によって、iPhoneのベースラインを定義したのだ。
この考え方は振り返ってみると、第2世代でも第3世代でも、そしてApple Watch SEでも共通するものだ。一つの完成形に達したパッケージングをそのままに、搭載する半導体デバイスや通信モデムをリフレッシュ。シリーズ番号が振られた“毎年の最新技術を盛り込んだモデル”とは別に、定番製品として提供し続ける。
アップルがSEを何のイニシャルなのか明言しなくなったのは、そこに“Standard Edition”など、他の意味合いも含まれるようになったからなのかもしれない。
現在のSEは、iPhoneプラットフォームのベースライン
初代SEから第2世代が登場するまでには4年の時間が必要だった。
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