くら寿司の「AI桜鯛」が好調 なぜ「スマート養殖」にチカラを入れるのか:魚の食欲を解析(5/5 ページ)
くら寿司は3月11日に、AIやIoTを活用したスマート給餌機を使って成育した「AI桜鯛」を発売。3月15日までの期間限定販売だったが、一部の店舗では予定より早く完売した。同社では、この実証実験の結果を踏まえ、6月からスマート養殖に本格参入するという。その狙いとは……。
期間限定で発売した「AI 桜鯛」が好調
くら寿司が、3月11〜15日の期間限定で発売した「AI桜鯛」は、多くのメディアで紹介されたこともあり、売れ行きは好調だったという。
「今回、数量が少なかったことに加え、予想より反響が大きく、一部の店舗では15日の終了を前に完売となりました。桜鯛は、産卵に向けて栄養を蓄えピンク色に染まったメスの真鯛を指し、脂が乗って非常においしいんです。1貫110円という手頃な値段設定にしたことも、人気につながったと思っています」(くら寿司 小坂氏)
筆者は、AI桜鯛の試食を目的に、3月15日の午後5時過ぎに「くら寿司 西新宿店」を訪れたが、すでに完売していた。平日、かつ夕食には早い時間帯でありながら、20〜30代の若い人たちを中心に15分ほどの待ち時間があったことにも驚いた。
「AI桜鯛」のほか、愛媛フェアとして、養殖で育てた愛媛県産のクエ、みかん真はた、鯛などを使用した商品も販売中だったが、西新宿店は「愛媛県産 くえクイーン」(1貫/220円)も完売していた。
次に、くら寿司でAI真鯛を食べられるのは、稚魚が成長して漁獲できる24年秋以降となる。そこでは、全国の店舗で使用している養殖真鯛の約3分の1をまかなう量の漁獲を目指しているそうだ。
「今後の課題は、生産量をどう増やしていくか。養殖業における国内自給率を上げていくことによって、安定した価格で商品を提供できると考えています」(くら寿司 小坂氏)
小坂氏いわく、スマート養殖市場は徐々に盛り上がりを見せており、大手を中心に参入企業が増えているようだ。ウミトロンでは、今後、養殖魚のエサやり、食欲解析、魚体測定、海洋環境などのデータを統合し、稚魚から出荷までを効率化・自動化できるようなサービスを目指したいという。
スマート養殖の普及は、生産者にとっても、くら寿司のように魚を提供する事業者にとっても、消費者にとってもメリットがありそうだ。
写真提供:くら寿司
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