くら寿司の「AI桜鯛」が好調 なぜ「スマート養殖」にチカラを入れるのか:魚の食欲を解析(4/5 ページ)
くら寿司は3月11日に、AIやIoTを活用したスマート給餌機を使って成育した「AI桜鯛」を発売。3月15日までの期間限定販売だったが、一部の店舗では予定より早く完売した。同社では、この実証実験の結果を踏まえ、6月からスマート養殖に本格参入するという。その狙いとは……。
漁業の後継者不足を改善、安定した魚の供給へ
「スマート養殖のビジネスモデルは、生産者へウミトロンセル、稚魚、エサを支給し、育った魚はKURA おさかなファームが100%買い取る流れです。生産者にとって極力リスクのない方法を採用しました」(くら寿司 小坂氏)
赤潮などにより、もし稚魚がうまく育たなかった場合でも、生産者に負担がないよう配慮するという。リスクがあるのは覚悟のうえで、「生産者にはとにかく漁業を続けてほしい」というのがくら寿司の意向だ。
「漁業における後継者不足の課題は顕著です。このまま何も対策を講じなければ、ゆくゆくは安定した商品の提供が難しくなる可能性があります。漁業創生の取り組みの一つとして、魚を提供する事業者の当社は、スマート養殖にいち早く参入すべきだと考えました」(くら寿司 小坂氏)
担い手の高齢化や後継者不足に加え、海洋環境の変動などの影響により国内の漁獲量は減少している。グローバルでは魚介類の消費量が年間約3%の伸びで増え続けるなか、国内の漁獲量は1984年の1282万トンをピークに、19年には420万トンまで減少。
このような背景により魚の価格が上がり、国内より海外に売ったほうが利益が出るために、海外に魚が流れてしまう買い負けの事態も発生している。実際に、以前はくら寿司で2貫100円ほどで販売していた真鯛が、近年は2貫200円ほどまで値上がりしている。
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