くら寿司の「AI桜鯛」が好調 なぜ「スマート養殖」にチカラを入れるのか:魚の食欲を解析(3/5 ページ)
くら寿司は3月11日に、AIやIoTを活用したスマート給餌機を使って成育した「AI桜鯛」を発売。3月15日までの期間限定販売だったが、一部の店舗では予定より早く完売した。同社では、この実証実験の結果を踏まえ、6月からスマート養殖に本格参入するという。その狙いとは……。
漁師のお墨付きをもらい、6月から本格参入へ
今回の実証実験は、KURA おさかなファームが愛媛県宇和島市の中田水産に養殖を委託して実施された。その結果、長年の経験を持つプロの漁師が、ウミトロンセルのAIの精度を高く評価したという。生産者の労働量にも大きな変化があり、生産者自身が「これなら息子に継がせられるかもしれない」と思えるぐらい、負担が削減したそうだ。
「従来の養殖とウミトロンセルを使用したスマート養殖における魚の味を比較するための実証実験で、結果的に差はないと判断しました。エサの量などの微調整はあったものの、漁師の目から見ても、魚の品質に影響を与えるような誤差はなかったそうです」(くら寿司 小坂氏)
19年にリリースされたウミトロンセルは、魚のエサやりに関するデータ取得と解析を進め、生産者からフィードバックを受けながら、AIの精度を高めていったそうだ。
「魚のエサやりに関連するデータは、これまで世の中に存在しなかったものでした。当社では、IoTやAI技術をいち早く取り入れ、エサを食べる魚の様子を記録した動画やエサの量、エサをあげるタイミングなどのデータを蓄積し、製品に反映させています」(ウミトロン 佐藤氏)
ウミトロンの創業者、兼CEOの藤原謙氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で人工衛星の研究開発に従事した後、三井物産で衛星を活用した農業ベンチャーへの新規事業投資、及び事業開発支援に携わったというユニークな経歴の持ち主。そんな背景から、ウミトロンの製品には、衛星リモートセンシングも使われているそうだ。
今回の実証実験を経て、KURA おさかなファームでは、中田水産を含む愛媛県宇和島市内の養殖業者3社と契約を締結。6月からスマート養殖に本格参入する。実証実験では、ある程度、育った状態からのスタートだったが、本格参入では稚魚から2年ほどかけて真鯛を成育し、24年秋の初出荷を目指す。
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