コロナ禍でも店舗数が約3倍! 「焼肉ライク」の“強運”とライバル不在のビジネスモデル:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
焼き肉のファストフードという新ジャンルを開拓した、「焼肉ライク」がコロナ禍でも店舗数を約3倍に増やしている。意図せずしてコロナ禍のニーズにマッチした業態となったことが追い風となった。なぜ独走状態なのか。
コロナ禍の対応力が高い
焼肉ライクで特筆できるのは、コロナ禍における対応力の高さだ。
1人1台の無煙ロースターを設置して個食に対応。“お一人さま”の顧客が8割を占めるという。1人で食べると当然、黙食になる。
注文を受けて3分以内でサッと料理が出てくるから、店内に長居する必要がない。平均滞在時間は25分とのことだ。
また、一般的な飲食店の場合、店内の空気は1時間に2.5回入れ替わるとされているが、焼肉ライクでは店内ダクト設備によって22.5回も入れ替わる。それだけ通気性が良い場所で、顧客たちは黙食をしていて、注文もタッチパネルだから非接触性が高い。
つまり、感染拡大しやすいといわれる「換気の悪い空間での長時間にわたる大人数の会食」とは全く真逆の店になっていて、それが分かりやすく表現されているのだ。
焼肉ライク1号店は18年8月、東京・新橋にオープンしている。もちろんその頃は新型コロナウイルス感染症のパンデミックなど影も形もなかった。結果的にコロナ禍にも対応できる業態になっていたというわけだ。
焼肉ライクは、ダイニングイノベーションという外食企業の子会社。ダイニングイノベーション創業者の西山知義氏は、今はコロワイド傘下にある「牛角」の創業者でもあり、焼き肉に精通している。
西山氏は「牛角」を焼き肉業界売り上げトップのチェーンに導く一方、焼き肉店に対する人々の不満に耳を傾けていた。「1人では入りにくい」「1人で行ってもいろいろな部位を楽しめない」「提供に時間がかかる」――そういった、世間で高まる1人焼き肉への待望を形にしたのが、焼肉ライク。新橋1号店はオープン当初は行列店となり、注目の的となった。
特長として、女性1人でも、仕事中のビジネスパーソン1人でも、気軽に入れる雰囲気が挙げられる。また、肉のにおいが服や髪に付着しにくい、無煙ロースターと換気システムを導入している。
メニューは焼き肉屋で定番とされる冷麺やユッケなどを置かず、シンプルに焼き肉、ごはん、ワカメスープ、キムチ、タマネギ、若干のサイドメニューのみとして、クイックな提供を心掛けた。肉は工場でカットするので、あとはお店で盛り付けるだけ。肉を焼く作業は顧客がしてくれる。
「焼肉セット(ごはん、ワカメスープ、キムチ、玉ねぎ付き)」には、「匠カルビ&ハラミセット」「バラカルビセット」「牛すき焼肉セット」などがあり、全部で15種類ほど。肉の量はセットによって100〜450グラム、価格は580〜2120円となっている。一例を挙げれば、「バラカルビセット」は、100グラム・580円、150グラム・770円、200グラム・950円、300グラム・1310円だ。
部位、量、タレが選べるカスタムメニューでは、「今日はバラカルビをタレで50グラム、ハラミを塩ダレで100グラム、牛ホルモンをみそダレで50グラム」といった注文の仕方が可能だ。ごはんに関しても、カスタムメニューとして、ちょい足しのカレーや卵かけごはんにできるオプションがある。
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元「雨上がり決死隊」で、現在はユーチューバーの宮迫博之氏が高級焼き肉店「牛宮城」をオープンした。経営の支援をしているのは、ハンバーガー店などを経営する“実力者”。高級焼き肉店のビジネスモデルを分析する。
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