経産省が太鼓判! あのワタミが「健康経営優良法人」に認定されたワケ:人事総務部長にインタビュー(1/3 ページ)
さまざまな逆風に直面してきたワタミが、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」に選ばれた。同社の総務人事部長に、同社での取り組みを聞いた。
異常な長時間労働、低賃金、パワハラの横行など、劣悪な労働環境を放置する会社が「ブラック企業」と呼ばれ、社会問題となって久しい。ブラック企業における違法な過重労働により、従業員が心身に変調を来たしたり、企業が摘発されたりする事態にもなりかねず、社会全体として心身ともに健康に、安心して働ける職場環境を求める機運が高まっている。
そんな中、昨今注目されているのが「健康経営」だ。「会社組織が一丸となって、働く人の健康管理をサポートし、健康の保持・増進につながる取り組みを実践していこう」という考え方であり、従業員のモチベーションが向上し、組織全体の生産性もアップしていくことが期待されている。
そして、企業が積極的に健康経営に取り組むことを促し、優良な健康経営を実践している企業を顕彰する目的で経済産業省が2016年度に創設したのが「健康経営優良法人制度」だ。従業員数301人以上(小売業の場合51人以上、サービス・卸売業101人以上)の「大規模法人部門」と、それ未満の規模の「中小法人部門」に分かれており、それぞれ28項目の評価基準に基づいて審査した上で、「健康経営優良法人」として認定するものである。
今後少子化がさらに進展し、若手労働者が希少価値となっていくに当たり、とりわけ労働環境について、働き手の目はますます厳しくなりつつある。そのような時代において、「従業員の心身の健康に配慮した企業」というポジティブイメージの影響力は大きい。健康経営優良法人に認定されることは、企業自体のブランド力やイメージアップにもつながるものといえよう。
認定は毎年行っているが、その基準は厳しい。「大規模法人部門」の場合、28項目の評価基準中、12項目が必須項目であり、それ以外の16項目中13項目の達成が要件。実際、初年度の認定率は32%となかなかの難関であった(現在の認定率は6割程度と、若干向上している)。
ちなみに、認定基準の評価項目は以下の通りである。
大項目1:経営理念
評価項目:健康宣言の社内外への発信
大項目2:組織体制
評価項目:健康づくり責任者が役員以上、健康保険者と連携
大項目3:制度、施策実行
評価項目(1):定期検診受診率の実質100%
評価項目(2):受診推奨の取り組み
評価項目(3):50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
評価項目(4):健康増進、過重労働防止におけるストレスチェックの実施
評価項目(5):管理職または一般社員に対する教育機会の設定
評価項目(6):適切な働き方実現に向けた取り組み
評価項目(7):コミュニケーションの促進に向けた取り組み
評価項目(8):病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み
評価項目(9):保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
評価項目(10):食生活の改善に向けた取り組み
評価項目(11):運動機会の増進に向けた取り組み
評価項目(12):受動喫煙対策に関する取り組み
評価項目(13):従業員の感染症予防に向けた取り組み
評価項目(14):長時間労働者への対応に関する取り組み
評価項目(15):不調者への対応に関する取り組み
評価項目(16):産業医または保健師が健康保持、増進の立案、検討に関与
大項目4:評価、改善
評価項目:健康保持、増進を目的とした導入施策への効果検証を実施
大項目5:法令順守
評価項目(1)定期検診を実施している
評価項目(2)健保等保険者による特定健康診査、特定保健指導の実施
評価項目(3)50人以上の事業場におけるストレスチェックを実施している
評価項目(4)従業員の健康管理に関連する法令について重大な違反をしていない
なお、大項目1、2、4、5全ての評価項目を実施することが必須であり、大項目3は、評価項目(10)が必須、その他に関しては12個以上の実施が必要となる。
「ワタミ」が健康経営優良法人に認定
3月9日、「健康経営優良法人2022」の認定企業が発表された。その中の「大規模法人部門」に名を連ねていたのが、あの「ワタミ」だ。同社は28の審査項目中、27項目を満たしての認定となっている。
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