経産省が太鼓判! あのワタミが「健康経営優良法人」に認定されたワケ:人事総務部長にインタビュー(2/3 ページ)
さまざまな逆風に直面してきたワタミが、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」に選ばれた。同社の総務人事部長に、同社での取り組みを聞いた。
同社は創業から間もなく人気チェーンとなり急成長を遂げたが、労務トラブルなどを理由に厳しい批判を長きにわたって受けた。その後経営陣が入れ替わり、労働環境改善に全力を注いだ結果、収益も離職率も改善し、20年には「ホワイト企業大賞」特別賞を受賞するまでになる。
毀誉褒貶の激しい同社だが、コロナ禍で売上大幅減少、という苦境の中でも、従業員に基本給と同額の手当を支給し、雇用救済策を矢継ぎ早に講じるなど手厚い姿勢が評価されている。
同社は過去5年間にわたって健康経営優良法人の認定審査を申請していたが、これまで認定に至らなかった。今般の認定は、同社における地道な労務管理が奏功したものといえよう。
同社の労働環境改善に向けた取り組みのルーツは、15年にある。
その頃ワタミは、労務トラブルなどを理由に厳しい批判を長きにわたって受け、売り上げの低下にとどまらず、株価下落や採用活動の難航など事業活動全体に打撃を受けていた。そのわずか3年前の12年まで無借金経営だったのだが、15年末には債務超過寸前にまで追い込まれ、経営陣は廃業・倒産さえも覚悟するほど逼迫(ひっぱく)した状態にさらされていたのだ。
後がなくなったワタミは、労働環境改善のため文字通り聖域のない改革を進めていった。拡大一直線だった店舗数を削減し、深夜の営業時間を見直し、会議や研修も効率化して従業員負担を軽減。メンタルヘルスサポート、報酬体系の改善、働き方の多様化、労働組合結成、勤務インターバル制度の導入――などを矢継ぎ早に実施。その結果、成果指標として設定していた「離職率の低減」が「21.6%(16年)」「15.8%(17年)」「8.5%(19年)」と、年を追うごとに改善した。
その後も同社は「労働環境改善」を優先事項の一つと位置付け、16年から外部有識者を交えた「コンプライアンス委員会」と「業務改善委員会」を設置。コンプライアンス順守のモニタリングとともに労働環境改善の取り組みを進めていった。さらに19 年からは、従業員とともに取締役と人材開発本部、事業教育担当者が参加する会議を毎月開催。会議では従業員アンケートと連動させ、課題に対して改善のためのPDCAを実践しているという。
人事総務部長にインタビュー
今般の健康経営優良法人認定を受け、同社の取り組みについて労務管理改善の陣頭指揮をとってきた落石厚徳氏(人材開発本部 人事総務部 部長)にインタビューした。
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