時代と逆行して地方で勝負する「農家のコンビニ」コメリ ライバルの農協とも手を組むワケ:ブルーオーシャンを突き進む(1/3 ページ)
人口減などを背景に都市部マーケットの争奪戦が進む中、粛々と地方で勢力を拡大しているホームセンター「コメリ」。農家のコンビニともいわれる同社の強みとは。そして、市場を食い合うライバルの農協と提携を進める理由とは。
コロナ禍は、大都市への人流集中を抑制し、「不要不急」とされた店舗ビジネスに制約を課したため、都市部のエンターテインメント産業、外食産業、あるいは大規模商業施設に店を構えるビジネスなどに極めて大きなダメージを及ぼした。その反面、生活必需品を取り扱う小売業とされた食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターといった業態は「巣ごもり需要」という追い風によって、軒並み増収増益という環境を作り出した。
しかし、恩恵を受けたはずの生活必需品を扱う小売業界では、期せずして、大都市マーケットを巡る大再編が起こりつつある。「ニトリ VS DCMホールディングス」の島忠争奪戦、「マツモトキヨシ VS スギホールディングス」のココカラファイン争奪戦、「H2Oリテイリング VS オーケー」の関西スーパー争奪戦など、話題となった事例は、まさに大都市マーケットでのシェアを取り合う有力企業による陣取り合戦だといえる。
なぜ、こうした事態が起こっているのか。コロナの陰に隠れて見えづらくなってはいるが、地方における人口減少、高齢化による市場縮小が着実に進んでいることを、誰もが分かっているからである。大再編が起こっている業種が扱うものは生活必需品であるため、その需要は人口が減れば縮小することを避けられない。「将来人口推計」(社会保障人口問題研究所)などにおいて将来の人口推移予測もなされているので、人口(≒マーケット)が具体的にどのくらい減るのかということも、調べればすぐに分かる。
コロナ禍が去った後に訪れる業績の落ち込みは、“劇薬”ともいえるコロナ禍の影響で持ちこたえていた市場を一気に揺り戻し、縮小市場を巡って苛烈な椅子取りゲームが起こることは避けられないのである。
ただ、見込まれる市場縮小の度合いは全国一律というわけではなく、大都市圏の中心部、首都編でいえば国道16号線内側の人口は2045年になっても今より多いとされる。であれば、今のうちにこの「減らない市場」を確保したいと思うのは当然だろう。その結果、大都市市場の争奪戦が起こっているのであり、これからさらに激化することは容易に想像できる。特に「巣ごもり需要」の恩恵を受けた企業の大半は、追い風のある今が最高業績となる可能性が高く、今は「再編を考えるならここしかない」という環境にある。
一方、地方で勢力を拡大する“異色”企業も
そんな中、どこ吹く風で着々と地方で勢力拡大を続ける企業もある。「農家のコンビニ」ともいわれる小型店を軸に全国にホームセンターを1200店以上を展開するコメリだ。
05年は売り上げランキング7位に位置していた同社は、今や業界4位となる営業収益3857億円(21年3月期)、経常利益303億円(同)と高い収益力を誇り、着実に業界内での存在感を上げてきた成長株でもある。
そしてコメリのビジネスモデルは、他のホームセンターと大きく違っている点を指摘したい。
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