時代と逆行して地方で勝負する「農家のコンビニ」コメリ ライバルの農協とも手を組むワケ:ブルーオーシャンを突き進む(2/3 ページ)
人口減などを背景に都市部マーケットの争奪戦が進む中、粛々と地方で勢力を拡大しているホームセンター「コメリ」。農家のコンビニともいわれる同社の強みとは。そして、市場を食い合うライバルの農協と提携を進める理由とは。
農村エリアを中心に展開するコメリ。主要ターゲット顧客は農業者である。農業資材のような農業関連商材はもとより、農家の住生活に必要となる日用消耗品などをリーズナブルな価格で提供することで、支持を広げている。大規模小売店舗立地法による届け出が不要なサイズ(1000平方メートル未満)で、ホームセンターとしては小型と目される店舗を標準とすることで出店のスピードを実現するとともに、人口が希薄な農村地で他社が対応できない1万人以下の小商圏への出店を可能にしている。
小商圏にも対応可能なコスト構造を支えているのは、業界でも定評のあるIT化が進んだ効率的な物流網であり、ホームセンター業界のコンビニといわれるゆえんはここにもある。小型店のドミナントが整うと、そのエリア内に大型店舗を出店して、地域の一般消費者の住生活需要を一気に取りに行くことで、地域全体のシェアを獲得していけるため、ホームセンター他社にも大きな影響が及ぶことになる。
コメリは農家向け需要をフォローしていくため、昔から農業支援に関する4つのソリューション(「(1)ローコストな農業資材提供」「(2)営農支援体制『農業アドバイザー』」「(3)農産物販売支援」「(4)収穫期払い可能『アグリカード』」を提供することでもアピールしてきた。
ざっくりいえば、農業資材を安く提供し、営農サポーターを提供し、生産物の販売を支援し、収穫期まではお金が入らない農家に金融を提供する――というものなのだが、この機能をこれまで農家に提供していたのが、農協である。
これまで農家は「農協の金融によって農機具、農業資材を仕入れ、農協の営農支援を受けながら生産に従事し、できた生産物を農協に持ち込んで販売してもらった代金を金融返済に充て、残りが収入になる」という形で農協を活用していた。農家に農業資材などを買ってもらおうと思えば、それぞれのタイミングで発生するこうしたニーズにフレキシブルに対応できる機能を持っていないと、農協に打ち勝つことはできない、ということだ。コメリは、こうした機能を自社に備えることによって、農業資材供給における農協のシェアを奪って、大きくなってきたといっていいだろう。
ライバルのはずが続々「業務提携」の謎
このようなビジネスモデルがコメリの根幹をなす以上、基本的に各地の農協にとって、コメリは明らかにライバル関係となる存在である。ところが、最近では各地の農協とコメリの業務提携という不思議な同盟関係が複数誕生している。
20年3月にJA伊那と、21年4月にJA山形おきたま、JA紀の里と、それぞれ協業がスタートし、22年3月にはJA伊勢、JA多気郡とも協業に向けた協議が始まった。基本的には農協における資材や肥料などの販売をコメリの店舗に委託するという形なのだが、どう見ても競争関係にありそうな両者がどうして組むことができるのだろうか。
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