コロナで売り上げ3倍に 「ホットクック」が生み出した新市場とは?:家電メーカー進化論(5/5 ページ)
コロナ禍でライフスタイルが変化し、さまざまな白物家電が注目を集めている。中でも「ヘルシオ ホットクック」は爆発的な人気だ。シリーズ累計出荷台数は40万台。ホットクックがビジネスとして成功し、新しい市場を生み出すまでに成長したのか。人気の理由を見ていきたい。
圧力鍋ではないオンリーワンの強み
電気「調理」鍋であるホットクックの競合となる製品は、パナソニックやティファール、アイリスオーヤマなど、多くのメーカーが展開する電気「圧力」鍋だ。
販売メーカー数の多い電気圧力鍋のほうが、電気調理鍋よりも圧倒的に市場規模は大きい。電気圧力鍋の市場規模はSGマークの集荷枚数からみると、20年に94万台と台数だけで見れば圧倒的だ。
しかし、市場での存在感はホットクックのほうが大きい。それは「ヘルシオ」ブランドが培ってってきた「健康」のイメージと「放ったらかし」というメリットの訴求を徹底して行ったためだ。
実際にホットクックが発売された15年に電気圧力鍋は前年比4倍と急成長している。ホットクックが、コンロを使わない「電気鍋」の認知を広げ、市場を牽引したことは間違いない。
多くの電気圧力鍋の実勢価格が2〜3万円前後なのに対して、ホットクックは6万円前後と倍の価格だ。それでも高い人気を誇るのは、ホットクックでつくった料理の美味しさがネットの口コミで広がっていること、そして「放ったらかし」の使い勝手の良さが理由だ。
また、いち早くIoT機能を搭載し、スマートフォンからメニューをダウンロードして追加できるなど、先進性の高さも見逃せない。
シャープによると、すでに6割以上のホットクックがWi-Fiに接続されて、活用されているという。また20年から始まった公式ファンコミュニティー「ホットクック部」には、毎日のようにレシピが投稿されており、ユーザーの盛り上がりを見せているのもほかの競合製品にない特徴といえる。
美味しさや便利さ、先進性に加えて、ファンづくりに成功しているのが、ホットクックが突き抜けた存在になっている理由なのだ。
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