ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
高級米も「大苦戦」
なぜ筆者がそのように考えるのかというと、実はこれまで日本人の主食だった「米」に関しても、同じような現象が見て取れるからだ。
世間が「高級食パンブーム」にわく少し前の16年ごろから、「高級米ブーム」が起きていたことはあまり知られていない。この時期、高級ブランド米の代名詞であるコシヒカリに肩を並べる「高級米」が続々と世に送り出されているのだ。その代表が17年に登場した際に、最高級魚沼産コシヒカリに近い、5キロ3200〜3500円の値をつけた「新之助」だ。
この「高級米ブーム」も「高級食パンブーム」と同様、大きな話題となって一部の裕福な人たちから「毎日食べたい」と熱烈な支持を受けた。が、一方で一部の庶民からは高級食パン同様にネガティブな反応が見られた。「試しに一度買ってみたけどまずい」「高すぎる」とボロカスに叩く人も出た。
そして、こちらも高級食パンブーム同様、徐々に苦戦していく。『ブランド米が乱立、「いきなり超高級」で背水の陣』(日本経済新聞 2017年10月26日)という記事にはこんな苦境がレポートされている。
『ブランド米が乱立するなか、数年前に出たある銘柄について「なかなか売れなくて困る」と打ち明ける小売店や卸が少なくない。都内の複数のスーパーでこの銘柄の精米日を確かめてみると、1カ月たっている袋もあった。しかし、袋の裏側には「精米から2週間程度が鮮度の目安」などと書いてある』
このように人気はかんばしくなかったが、スーパーや小売店はブランド米を撤去もできず値下げもできない。記事中に登場した大手コメ卸幹部によれば、「県や代理店からブランド力を維持してほしいとの要請が強い」そうで、「我慢比べ」の状態だという。
つまり、米の生産量が大きく落ち込む中で、自治体が生産者の生き残りを目指して、付加価値向上を目指したわけだが、結局「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールの前に「大苦戦」をしていたというわけである。
「高級食パン」という新たなジャンルで付加価値の向上を目指したものの、結局「高すぎる」「ぼったくりだ」と閉店続出に追い込まれている今のパン業界と同じことが起きていたのだ。
関連記事
- 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - 欧米では「脱マスク」が進んでいるのに、なぜ日本は「マスクビジネス」が大盛況なのか
テレビを見ていると、欧米でマスクを着用している人は少ない。いや、ほとんどいないといった感じなのに、なぜ日本では多くの人が着用しているのか。その背景には、マスクビジネスが大きく関係しているようで……。 - イオンの「最低賃金以下」問題から見える、“安いニッポン”の無限ループ
イオン九州が、パート従業員を最低賃金よりも低い時給で募集していることが明らかになった。とはいっても、これは単純なミス。システムの更新がきちんとできていなかったので、過去の“安い時給”が表示されていたわけだが、筆者の窪田氏は「見過ごせない出来事」だと指摘している。どういうことかというと……。 - なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体
ゼンショーHDが群馬県内で展開しているコンビニ「さくらみくら便利店」が話題になっている。コンビニ業界は寡占化が進んでいるのに、このタイミングで参入して存在感を示すことができるのだろうか。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.