ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
高級米も「安いニッポン」に屈した
「高級米」と同じ道をたどっているとすると、「高級食パン」の未来は決して明るくない。「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という消費者の無言の圧力を受けて、じわじわ値下げに追い込まれていくからだ。
日本経済新聞社の調査では、最高級の新潟魚沼産コシヒカリの卸値(1俵=約60キロあたり)は1994年に3万6000円台まで上がってからはじわじわと落ち込んで、2015年ごろになるとなんと94年と比べて4割ほど安い2万2000円台まで低下している。ちなみに、この動きは「失われた30年」で激安になった日本人の賃金ともリンクをしている。
いずれにせよ、「最高級」と言われるコシヒカリでさえ、ここまで分かりやすく「安いニッポン」に屈しているのだ。「高すぎる」と叩かれて閉店が相次ぐ「高級食パン」も軽く軍門に下ってしまうだろう。
という話をすると決まって、「小泉改革が悪い」「円安のせい」「アベノミクスが元凶」「消費税をなくせばすぐに解決」と外的要因に持っていく人たちがいる。まったくの無関係ではないが、「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」というこの暗黙のルールに関しては、そういう最近の表面的な話の結果ではなく、戦前から続く日本人の「信仰」のようなものだ。
よくパンの話になると、「戦後に米国の占領期に給食で出されたことで国民に普及しました」みたいな説明をすることがあるが、実はこれは真っ赤なうそで、戦前から既にパンは日本人にとって欠かせないものとなっていた。
新聞やラジオでは、自宅でおいしいパンのつくり方が連載され、腕の悪いパン屋が増えると、『近頃の食パンはなぜ不味い?』(読売新聞 1935年12月6日)なんて真剣に討論された。だから、戦争に突入すると、「われわれ勤め人は最近街頭に全然パンが無いので困つている」(同紙1941年2月27日)という文句を投書するサラリーマンも多くいた。
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