白樺は白ワインみたいな味? 「木で造る酒」の商品化に向けた取り組みが熱い:桜の木は“ピンク色”の酒に(2/4 ページ)
日本で全く新しい酒の種類が生まれつつあることをご存じだろうか。それが、木材を原料にした「木の酒」だ。その香りや味はというと……。
木材はリグニン、セルロース、ヘミセルロースの3つの成分からできているが、セルロースとヘミセルロースの繊維は、リグニンで作られた細胞壁に覆われている。酒の製造に必要なセルロースだけを取り出すには、リグニンを溶す必要があるが、従来の方法では薬品を使用するため、飲み物にすることはできなかったという。
そこで、大塚氏が考えた秘策が「湿式ミリング処理」だ。顔料・インク・ペンキなどの分散・撹拌(かくはん)時に利用する「湿式ビーズミル」という装置を木材に使用するという。
この機械を使用すれば、木材をナノサイズまで粉砕でき、2〜4マイクロメートルの厚さがあるリグニンの細胞壁だけを破壊して、セルロースを取り出すことが可能になったのだ。
リグニンの細胞壁が破壊されると、セルロースとヘミセルロースが露出し、固まらずにドロッとした液状の「木材スラリー」が排出される。そこに、市販の食品用セルラーゼを投入し、セルロースをブドウ糖に分解。アルコール用の酵母を入れ発酵させて完成したのが「木の酒」だ。
桜の木を使用すれば“ピンク色”に変化
研究段階で開発した「木の酒」には、ワイン用と日本酒用の酵母を使用。スギ、白樺、桜、山桜、水楢、クロモジを使って、醸造酒と蒸留酒を造った。面白いのが、醸造酒は発酵直後全て薄黄色だが、熟成とともにその木材にあった色に変化していった点だ。
「桜はその花の色のように、時間がたつほど赤くなっていきました。3カ月たった頃には、きれいなピンク色だったのですが、1年たつと真っ赤。樹種によって色の変化はさまざまです」(大塚氏)
研究段階のため飲酒はできなかったが、筆者も香りをかがせてもらった。樹種によって香りが異なり、「桜の酒」は桜餅のような匂いがした。大塚氏は「白樺やクロモジはフルーティーな白ワインのような味だったが、スギは匂いが結構強烈だった」と話す。
開発した醸造酒のアルコール度数は1%だが、えぐみがあるのが難点だ。そのため、蒸留酒の方が製品化に向いているという。
歩留まりが良いのも特徴で、木材の種類によって異なるが、例えばスギだと2キロの木材でウイスキーボトル1本分の蒸留酒(アルコール度数35%)が製造できる。大塚氏は「立派に育ったスギ1本で200本以上のウイスキーが造れます」と話す。
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