同じ部署の「働かないおじさん」と、うまく仕事を進めるには:「働かないおじさん問題」のニュータイプ化(4/4 ページ)
もし自分と同じ部署に「働かないおじさん」がいる場合、どうしたらいいのだろうか? うまく仕事を進めるための秘訣を紹介する。
ベテランになると、褒められる機会が減ってきます。
「ベテランなんだからできて当然」「なんで達成できないんだ」「管理職は部下を褒める立場で、褒めてもらう立場ではない」といった考えの中、簡単に言えば「ご褒美」がない状態で何年も走り続けている人もいます。
「年齢や役職が高くなったから周囲からの承認は不要」というわけではありません。「組織の一員として承認や称賛されること」は重要なエネルギーです。
上司や同僚として「働かないおじさん」と接する際に、「足りない点」だけに目を向けず「よくやってくれている点」「感謝したい行動」に目を向けることは大切です。特にベテランほど、「自分は長年会社に貢献してきた」「今の部署を支えてきた」というプライドもあります。
今後も繰り返してもらいたい行動があれば、小さなことでも声に出して感謝の意を伝えましょう。
言われた本人は、「またやってあげよう」「こういうことすると喜ばれるのか」と思い、その行動を繰り返したくなります。
その後、「今度、こういうことをお願いできますか?」「こうしてくれると、もっとうれしいです」と無理のない範囲で徐々に期待する方向を伝えていきます。
このように、承認欲求や自己効力感を満たす伝え方をすることで、相手の心を動かすことができます。
人は何歳でも「褒められたい」
逆に、周囲が「あの人は何をやってもダメ」など、褒める点を探さず決めつけると、本人も「どうせ自分はダメだ」と自発的な意欲を失います。この心理は「ゴーレム効果」と呼ばれます。ゴーレムとは意思を持たず命令がないと動かない石人形です。
感謝の意を伝えていくと、「自分のことを認めてくれている」「信頼してくれている」「評価してくれている」といった思いが醸成されます。すると、その後に多少耳の痛いことを言われても、ある程度は冷静に受け止めるようになります。
人間には「一貫性の原理」があり、「自分は一貫した人間でありたい」「矛盾した行動を取りたくない」と思っています。
同僚や若手から感謝や褒められる経験を通して肯定的なセルフイメージができると、「これからも、そういう褒められる自分であり続けたい」「いい上司、いい先輩であり続けたい」と思うのです。
今後も繰り返してもらいたい点への感謝を「4」、変えてもらいたい点への指摘を「1」ぐらいの割合で話せば、徐々に変化が表れます。
褒める・認める・喜ぶ・感謝するというポジティブなフィードバックは、上司の専売特許ではありません。相手にとって自分が同僚や部下の立場であっても、積極的に活用していきましょう。案外、社内で一番褒められていないのは経営者や上司だったりします。
人は、何歳になっても褒められたい、認められたい、喜ばれたいものです。
著者:難波猛(なんば・たけし)
マンパワーグループ株式会社 ライトマネジメント事業部 シニアコンサルタント
1974年生まれ。早稲田大学卒業、出版社、求人広告代理店を経て2007年より現職。
提案営業、研修講師、コンサルタントとして日系・外資系企業を問わず2000名以上のキャリア開発施策、人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修等を100社以上担当。セミナー講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。プロティアン・キャリア協会認定アンバサダー。
著書に、『「働かないおじさん問題」のトリセツ』『雇用調整の考え方と進め方』『ネガティブフィードバック』『「働かないおじさん」は、なぜ「働けない」のか?』がある。
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