コロナ保険に不正受給の影? 販売停止に保険金減額、何が起こったのか:金融ディスラプション(2/3 ページ)
オミクロン株の大流行も収まりきらない中、コロナ保険にも大きな影響が起きている。「コロナ助け合い保険」は、感染者数の急増を理由に4月1日に販売を停止した。さらに、すでに販売した契約中の保険についても、保険金額を10分の1に変更する変更を行った。いったい何が起こったのだろうか。
保険加入直後に保険請求 最初の14日間で3〜4割が
先の保険金支払いのグラフを見ると、興味深い点がある。オミクロン株の流行は確かにこれまでにない数の感染者を生み出したが、感染者の増加をはるかに上回る比率で保険金支払いが起こっている。保険契約者数に対する保険金請求者の比率で考えても、明らかに3月の保険金請求額は異常だ。
保険の基本的な考え方は、保険に入った人のうちの一定比率が罹患する前提で、集めた保険料を罹った人に保険金として渡す、助け合いの仕組みだ。どの保険でも、この“一定比率”が安定すれば事業としても保険商品としても継続が可能になる。逆に、保険契約者のコロナ罹患率が急上昇すれば、保険は成り立たない。今回、「コロナ助け合い保険」で起こったことはこれだ。
ではなぜ保険金請求が急増したのか。そのヒントとなる数字が、保険加入から保険金請求までの時間にある。なんと、直近では3〜4割が加入から14日以内に保険金請求を行っているというのだ。中には保険申し込み後、15分後や1時間後にコロナに感染したとして保険金請求をしている例もあるという。
これでは、コロナに感染してから保険に加入したのではないか? と疑われても仕方ない。そもそも保険加入にあたっては、一週間以内にPCR検査を受ける予定がある人は、加入NGという仕組みとなっていた。体調が悪化し「コロナかもしれない」という人は、PCR検査を受ける前に保険加入してはいけないということだ。
しかし「PCR検査を受ける予定があるか」は、本人の心の中でしか分からない。また、無症状無自覚な人が、保険に入って、たまたま検査を受けてみたら陽性だったということもあり得る。自分がもしかしたらコロナかもしれないと思いつつ保険に加入するのは、本来は告知義務違反ともいえるが、「その証明義務は当社(justInCase)にあるので、証明は難しい」というのが実態だ。
さらに全く無症状でも、コロナ保険に入ってPCR検査を受け、もし陽性なら10万円がもらえることから、「お得だ」という情報がSNSなどで出回ったことも大きい。さらにAERAdot.は3月17日に、無料PCR検査が拡大する背景は保険金目当てだという記事を掲載した。こうした情報の拡散が、コロナ保険の継続を困難にしたともいえる。
関連記事
- 「感染リスクの高い人に届けたい」――自宅療養でも即時給付、スマホで入れるコロナ保険登場
新型コロナウイルスにかかった場合の自宅療養でも、一時金10万円を保障する医療保険「コロナ助け合い保険」が登場する。スマホやWebから申し込むことができ、クレジットカード登録で即時保障が開始。利益が出た場合は、全額医療機関に寄付するという - 大同生命とjustInCase、「コロナ助け合い保険」を2年間無償提供 中小企業勤務者向け
大同生命(大阪市西区)とjustInCase(東京都中央区)は、中小企業向けの「コロナ助け合い保険」の無償提供期間を2年間に延長した。1泊2日以上の入院に対し、入院一時金5万円を保障する。また、新型コロナウイルス感染時の自宅療養にも対応する。 - サービスに組み込めるキャンセル保険登場 コロナ禍を原因とするキャンセルも補償対象
Finatextと、あいおいニッセイ同和損害保険が出資するスマートプラス少額短期保険は7月19日、自社のサービスに組み込めるキャンセル保険の提供を開始した。 - 第一スマート、感染状況に応じて保険料が変動する「コロナminiサポほけん」
第一生命グループの第一スマート少額短期保険は4月7日、新型コロナウイルスの感染状況に応じて保険料が変動する新型の保険「コロナminiサポほけん」(正式名称:特定感染症保険)を4月9日から提供する。 - 保険料0円が続いてきた「わりかん保険」についに保険料発生 その時加入者は?
日本初のP2P保険である「わりかん保険」で7月、初めて保険料が発生した。保険スタートアップのjustInCaseが提供するわりかん保険は、加入者同士の助け合いの精神のもと、毎月決まった保険料を支払うのではなく、保険金支払いが発生したときに初めて、加入者で保険金額を“割り勘”して支払う仕組みのがん保険だ。 - がんになった人の保険金を加入者が分担 P2P保険の「わりかん保険」が開始
インシュアテック事業を営むjustInCaseが、1月28日からP2P保険の「わりかん保険」の提供を開始した。これは、保険加入者の中からガンになった人が出たら、保険金を渡し、その費用を加入者全員で割って支払うという仕組みの保険だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.