コロナ保険に不正受給の影? 販売停止に保険金減額、何が起こったのか:金融ディスラプション(3/3 ページ)
オミクロン株の大流行も収まりきらない中、コロナ保険にも大きな影響が起きている。「コロナ助け合い保険」は、感染者数の急増を理由に4月1日に販売を停止した。さらに、すでに販売した契約中の保険についても、保険金額を10分の1に変更する変更を行った。いったい何が起こったのだろうか。
保険は「お得」か「助け合い」か
今回の販売停止や保険金の減額について、justInCaseを「想定が甘かった」「約束を履行してほしい」と批判するのは簡単だ。一方で、保険を「お得」かどうかで捉える考え方は危険もはらんでいる。
「保険の告知は善意のもとに成り立っている。(もし告知義務違反があっても)逆証明は無理だと思いつつ、抑制になればいいと思っていた」と畑氏は振り返る。デルタ株流行のタイミングでは、コロナで動けなくなると生活に支障が出る人など、本当に必要な人だけが加入しており、加入者全員で、運悪く罹患してしまった人を助ける仕組みが回っていた。
ところが、オミクロン株では良くも悪くも認知が高まり、多くの人がコロナ保険に関心を寄せた。その結果、一定数の悪い人が入ってきたために、助け合いの仕組みが成り立たなくなった。
コロナに罹ってからコロナ保険に入るような、悪い人がいることを前提とした保険のほうがいいだろうか。実は中国でブームを巻き起こしたP2P型保険はそうした形だった。性悪説に基づき、互いに監視し、ソーシャルスコアによって数字で各人の評判を保証する。悪い人は、その後さまざまなサービスを受けられなくすることで、問題行動を抑制する形だ。
ただし性悪制を前提にした保険には、無駄な管理コストが生じるのは容易に分かる。畑氏は「悪いやつもいるとか、マジョリティが悪いやつという考え方ではサービスをやりたくない」と話す。
本来の保険は、仲間内でお金を出し合って、困った人を助けるという助け合いの仕組みだった。ところが加入者の増大、業界の営利化などで助け合いの精神は失われつつある。あたかもキャンペーンの当選金のように、「今ならコロナ保険がお得」という情報が流れるのは、コロナ保険が図らずもあらわにしてしまった保険の現状なのかもしれない。
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